アロマセラピールーム燈和(Hiyori)

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アロマセラピーの安全性と専門性を軸に、
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静かに学びを深めていきたいと考えています。

 

 

最近のオススメ記事

 

<空間芳香と室内空気質>

・第1回 室内空気質(IAQ)とは

https://aromaeffect.hatenablog.com/entry/iaq1

・第2回 IAQ視点から空間芳香を考える

https://aromaeffect.hatenablog.com/entry/iaq2

・第3回 アロマセラピスト向け安全ガイドライン案

https://aromaeffect.hatenablog.com/entry/iaq3

 

 

<アロマクラフト>

・アロマクラフトで精油は本当に混ざるのか?

https://aromaeffect.hatenablog.com/entry/20260601DIYformulation

 

 

 

 

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空間芳香と室内空気質③ IAQアロマセラピスト向け安全ガイドライン案

※この記事で示す「ガイドライン案」は、公的機関等が定めた基準ではなく、既存のIAQに関する知見をもとに、アロマセラピストの実践を考えるための私自身の提案です。

 

 

この記事はシリーズ最後になります。

「IAQ 室内空気質」とは何か。

もし初めて出会う言葉なら、ぜひ第1回目から
お読みいただく事をお勧めします。

 

aromaeffect.hatenablog.com

 

今回は総まとめとして、空間芳香における
アロマセラピスト向けガイドライン案
作ってみました。あくまで、1案です。

 

今まで話した内容の復習と実践に向けて
イメージがしやすくなるかな、と思います。

 

 

香りの提供と共にリスク管理を

 

アロマセラピーにおいて「芳香浴」は、長年、
リラクセーションや気分転換の手段として紹介され
認知が広がっていきました。

 

また、一般向けに、”浄化”や”天然の消毒剤”という
肯定的な印象を含む言葉で紹介されることも多い
ように思います。

 

 

このシリーズで私たちは、「室内空気質(IAQ)」
視点で芳香浴を考えることを学んできました。

 

IAQ視点から見ると、

精油を空間に芳香させることは、
揮発性有機化合物(VOC)の
”意図的”な放出となります。

 

そして、環境により「汚染源」となる可能性があり、
健康への影響が懸念されることもある。

 

 

少し不安に感じた方もおられるでしょう。
私もその一人です。

 

芳香浴を「どう考えるか」は分かった。

では、「どう対処するか」。

 

実は、”意図的”としたところに意味があります。

 

揮発性有機化合物/芳香成分の空間への放出は
知識と制御によりリスク管理できます。

 

アロマセラピストは、香りの専門家として
”心地よい香り”を提供するだけでなく、
室内空気を安全に保つことも考え
ご提案していかなければなりません。

 

 

安全な室内環境を維持するために

WHOのIAQガイドラインと、前回ご紹介した
40m3の実規模実験の研究データを参考にして
考慮すべきことを順に見ていきましょう。

 

利用者教育

何よりもまず、安全神話の誤解を解くこと。

 

精油は自然の恵み。

心地よい香りに私たちは癒されます。

 

しかし、
自然のものが安全であるとは限りません。
使い方に注意が必要なことも伝えましょう。

 

精油を変えるのではありません。

私たちの視点を変えるのです。

 

定期的に換気を行う

IAQの快適な室内環境を考えるとき
最も手軽で最も有効な方法と思われます。

 

屋外空気との入れ替えを計画的に行うことで
室内のVOC濃度を希釈したり、
排出したりすることができます。

 

芳香後に十分な換気を行い、室内の使用状況や
換気条件に応じて換気頻度を調整します。

 

この記事では、換気の一つの目安として
「1時間程度」と置いてみます。

 

もし換気の難しい環境であれば
換気扇、扇風機、サーキュレーターを使うなど
空気の流れが停留しない工夫が必要になります。

 

 

ディフューザーを環境や目的に合わせて選ぶ

使用するディフューザーの選択は、
利用者の曝露量(濃度)と時間(持続性)を
リスク管理することにつながります。

 

ディフューザーによる曝露に関しての
詳細は、このシリーズの2回目で
触れていますので、再度ご確認ください

『第2回 IAQ視点から空間芳香を考える』

https://aromaeffect.hatenablog.com/entry/iaq2

 

電気式ディフューザー(瞬間型)

短時間で効果的に芳香できますが
十分に換気がなされていない場合
急激な濃度上昇を招きます。

 

また、精油の液相と気相で
時間の経過と共に成分構成比が変わります

 

 

これに対し、次のような対策ができます。

 

1. 室内濃度の調整

 

・積極的な換気を行う

 → 時間を決めて窓の開け閉めする
   使用状況に応じて定期的に行う。

 → 窓を完全に閉めない
   隙間を開けておくなどの工夫

 

・デバイスのスマート機能をつかう

 → 間欠設定でインターバルを設定する

 → タイマー設定で一定時間だけ拡散する

 

2. 空気の流れを利用する

・建物の24時間換気システム

・人の出入りが多い場所

こうした環境では換気の自動化が期待できます。

 

リードディフューザー(連続型)

急激な室内の濃度上昇は起こりにくいですが、
長時間にわたって放散が続くため
持続した曝露を考慮する必要があります。

 

室内濃度は空間の広さだけで決まりません。

「広い部屋だから安心」
「狭い部屋だから危険」

と単純に判断できないのです。

 

空間が広くても、リードディフューザーからの
放散そのものが止まるわけではありません。

 

広い空間では、同じ放出量であれば、空気中濃度は
低くなる可能性があります。

 

しかし、放散源が存在する限り、放散量、
換気条件、使用時間、空気の流れなど
によって室内濃度は変化します。

 

そのため、こうしたすべての条件を合わせて
考慮することが重要です。

 

 

これに対し、次のような対策ができます。

 

1. 室内濃度の調整

 

・精油濃度を希釈剤で調整する

 → 薄くしたい場合は、ディフューザーベース
   や無水エタノールで薄めることができる。

   製品の仕様や希釈剤の種類によって
   放散特性が変わるため、適切な濃度を検討。

   DIYの場合は、環境にあわせて設計する。

 

・リードの本数や材質で調整する

 → 本数を減らすことで揮発を抑える

 → リードの材質で吸い上げ能力が違う

 

2. 芳香環境を選ぶ

 

・人が出入りする空間

 日常的に人が出入りする場所では
 自然な換気が期待でき、ほのかに芳香する
 玄関やトイレなど。

 

・長時間滞在しない空間

 換気条件にもよるが、長時間作業する部屋
 は不向きかもしれません。書斎や勉強部屋など。

 リードディフューザーの傍で長時間の
 作業をしない選択もある。

 

他のディフューザーも検討する

アロマストーンやアロマウッドなど、
精油を
1~2滴しか使わないものは、
一時的で持続性が低くなります。

気分転換など、短時間の芳香であれば、
この程度の使用でも十分な場合があります。

 

精油の組成と物理化学的特性はリスク管理の基本知識

ディフューザー選びとリスク管理の
最大の武器は知識だと思います。

 

選ぶ精油や時間の経過で、空間の化学物質
構成が変化することを知っておくこと。

臨機応変に対応するためのスキルになります。

 

考慮する点をいくつか挙げておきます。

 

・精油は芳香物質の混合体である

 すべての物質の動態を追うことはできない。
 しかし、ある程度の予測は可能。

 

・各芳香物質の揮発性

 分子の大きさや化学構造などによって
 蒸気圧が異なる。そのため、
 成分によって気相へ移行する速度も異なる。

 気相への移行速度の違いで空間濃度を予測。

 

・室内温度

 空間の温度が高いほど早く揮発する。

 

複合曝露の考慮

芳香する空間環境を、ある程度、
把握することも重要です。

 

現代では、意図せず多くの化学物質に
囲まれて生活していると言われます。

 

例えば、建築材の塗料・接着剤類、
家具、電化製品、布製品、洗剤類、消臭剤、
化粧品類、など挙げればきりがない…。

 

複合曝露とは、こうした身近にある
複数の化学物質に、同時または重複して

曝露される状況を指します。

 

精油を芳香することで、室内空気中に
新たな化学物質が加わることになります。

 

複合曝露による健康への影響が生じる
可能性も常に念頭に置いておきましょう。

 

二次汚染の回避

注意したいリスクの一つが、室内空気中の
オゾン(O3)とテルペン化合物類の反応
によって生成される二次汚染物質です。



これに対する対策として

オゾン発生源がある空間での
精油による芳香浴は避ける

ということが重要になります。

 

オゾン発生源の例として、
一部の空気清浄機やコピー機などがあります。

 

特に注意が必要なケース(対象者)

基本的に、濃度や拡散時間に関して、
どのような環境下でも注意は必要です。


・ 呼吸器疾患のある方

・ 香りや化学物質に過敏な方

・ 乳幼児の居る環境

・ 高齢者の居る環境

・ 動物がいる環境

 

これらは「精油だから危険」という意味はなく、
室内環境の変化や曝露への配慮が必要なケース
として考えます。

 

考慮すべき点

 

・化学物質への曝露に対する感受性

 → 身体的な状態や個人差など

 

・ 室内空気質の変化への対応

  → 呼吸機能など、身体機能の違い

 

・ 床に近い場所を生活環境としている

  → 床表面に沈着した残留成分を
    吸い込みやすい。口にしやすい。

 

まとめ

シリーズ3回にわたり、【空間芳香と室内空気質】
を一緒に見てきました。

 

私たちアロマセラピストは、精油は
健康へ良い影響を与えるものと信じています。

 

特に、空間芳香は、”気軽で比較的安全なもの”
であり、深く注意を払う人は多くないと思います。

 

アロマセラピーにおいての空間芳香は
相手の好みの香りやシーンに合わせたブレンド
をメインに考えるほうが多いでしょう。

 

私もIAQという考え方に出会うまではそうでした。

 

アロマセラピーは他分野に渡る知識が必要と
理解していたつもりでしたが、
新たな領域が追加された!という気分。

そして、ぜひシェアしたい内容でもありました。

 

最終となるこの記事は、冒頭でもお伝えしたように
IAQの考え方をアロマセラピスト向けに
安全ガイドライン「案」としてまとめたものです。


どなたかのお役に立てれば嬉しく思いますし、
もし、ご自身でより良い案が見つかれば
それに沿った実践に活かしてもらいたいと思います。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 

 

参考文献とキーワード

今回のブログ作成にあたり、以下の文献を参照しています。
興味のある方はぜひご確認ください。

海外の研究・ガイドライン

  1. Angulo-Milhem, S., Verriele, M., Nicolas, M., & Thevenet, F. "Full-scale determination of essential oil diffusion: impact on indoor air quality" (実規模実験室「IRINA」を用いた精油拡散の室内空気質への影響に関する研究報告)
  2. Angulo-Milhem, S., Verriele, M., Nicolas, M., & Thevenet, F. (2021). "Indoor use of essential oils: Emission rates, exposure time and impact on air quality." Atmospheric Environment, 244, 117863
  3. Su, H. J., Chao, C. J., Chang, H. Y., & Wu, P. C. (2007). "The effects of evaporating essential oils on indoor air quality." Atmospheric Environment, 41, 1230-1236.
  4. World Health Organization (2010). "WHO guidelines for indoor air quality: selected pollutants." (WHO 室内空気質ガイドライン:選択された汚染物質)

日本の研究論文・報告

  1. 吉田弥明, 木村愛, 羽鳥友康, 山田誠, 滝欽二, 山田雅章 (2004). 「スギムク材内装モデル居室における揮発性有機化合物 (VOCs) の放散挙動」 『木材学会誌』 vol. 50, No. 3, p. 168-175
  2. 神野透人, 香川(田中)聡子, 小濱とも子, 宮川真琴, 吉川淳, 小松一裕, 徳永裕司 (2007). 「室内空気中の総揮発性有機化合物 (TVOC) に対する芳香剤・消臭剤の影響に関する研究」 『国立衛研報』 125, 72-78.
  3. 高木麻衣, 吉永淳 (2009). 「日本人小児のハウスダストを介した化学物質曝露のリスク評価」 『室内環境』 Vol. 12, No. 2, pp. 103-114.
  4. 松木秀明 (1998). 「化学物質による室内汚染」 『大気環境学会誌』 第33巻 第2号, A19-A29.
  5. 松村年郎 (1996). 「化学物質による室内空気汚染 ―VOCとホルムアルデヒドについて―」 『大気環境学会誌』 第31巻 第6号, A154-A163.

キーワード

室内空気質, IAQ, 室内環境, 建築環境衛生, 室内汚染, 大気環境学 

 

空間芳香と室内空気質② IAQ視点から精油の空間芳香を考える

「室内空気質」とは何か。

第1回目の記事はお読みいただけましたか?

 

aromaeffect.hatenablog.com

 

今回は、シリーズ2回目です。

 

テーマは、室内空気質(IAQ)視点から

精油の空間芳香をどう考えるか?

 

はじめに、お伝えしたいことがあります。

 

本シリーズ記事は、「精油が安全か?危険か?」を

問うものではなく、また、その結論づけもしません。

 

空間芳香をより適切にコントロールするための知識を

アロマセラピストの視点から共有することを目的とします。

 

あくまで国内外の研究論文やガイドラインをもとに、

私が整理・考察した内容であることをご留意ください。

 

参考文献やキーワードも載せていますので

興味ある方はそちらも合わせてご覧ください。

 

精油は「空気中に存在する化学物質」と捉える

 

アロマセラピーの「芳香浴」は、気分転換や

リラクセーション、時として、微生物抑制作用を

期待して行われます。

 

しかし、精油は

” 揮発性有機化合物の混合物 " です。

 

室内空気質(IAQ)視点に立つと、芳香浴は

空間へ揮発性の化学物質(芳香物質)を

意図的に放出することになります。

 

私たちは今一度、精油の科学的特性を考慮し

空間での動態を追ってみる必要があります。

 

WHO(世界保健機関)のVOCの分類

WHOの室内空気質(以下、IAQ)に関する資料では

室内空気汚染の原因となる揮発性有機化合物(以下、VOC)

を沸点範囲により分類しています。

 

分類 名称 沸点範囲(℃)
VVOC 高揮発性有機化合物 50 - 100 以下
VOC 揮発性有機化合物 50-100 〜 240-260
SVOC 半揮発性有機化合物 240-260 〜 380-400
POM 粒子状有機物質 380 以上

 

また、室内空気中の複数のVOCをまとめて評価する指標として

【TVOC(総揮発性有機化合物)】が用いられます。

 

精油を構成する個々の芳香物質には、VOCの範囲に入るもの

が多く含まれます。一方、芳香物質によっては揮発性は異なり

沸点や蒸気圧によって空気中への移行しやすさも異なります。

 

空間芳香がIAQに与える影響

すでにお伝えしたように、室内で精油を拡散させる

行為は、あなたの目的に関係なく、IAQ視点から

VOCを室内に放出することを意味します。

 

多くの研究ではこうした状況を「曝露」という

用語を使って記されます。

 

精油の空間芳香は、室内に精油由来のVOCへの

曝露を加えることになります

 

このことを踏まえ、以下の影響が懸念されます。

  1. 室内のTVOC濃度
    後ほど紹介する研究によると、装置
    による精油拡散で、場合にもよりますが、
    欧州のTVOC曝露レベルの推奨値を
    1桁以上も超過する可能性が指摘されました

  2. 屋内発生源
    WHOのガイドラインでは、屋内発生源の
    存在に触れ、制御することを推奨しています。
    屋内発生源とは、化学物質を室内に放散・排出
    するもののことを言います。
    アロマディフューザーは発生源の1つです。

  3. 複合曝露
    個々の物質が推奨基準値以下であっても、
    室内に存在する複数の物質が混合することで
    健康に影響が生じる可能性があるとされます。
    ただ、有害性に関しては、現時点で確かな証拠
    はなく、さらなる調査が必要とされています。

 

 

汚染物質と二次汚染物質について

WHOは、室内で一般的に見られ、健康に懸念のある

濃度で存在する9つの化学物質(または、物質群)

を「主な汚染物質」としてあげ、個別の指針値を

設定しています。

 

これらの汚染物質と精油は直接的に関係はありません

 

私たちアロマセラピストが注意するのは

「二次汚染物質」になります。

 

芳香物質に多く含まれるテルペノイド揮発性

有機化合物は、室内のオゾン等との酸化反応により、

ホルムアルデヒドやニ次有機エアロゾル(SOA)の

生成につながる可能性が指摘されています。

 

 

40m3の実規模実験を読み解く

ここから、次の研究に関して話を進めます。

https://doi.org/10.1016/j.atmosenv.2023.120141

 

フランスの研究チームが40立方メートルの実生活スケールの

実験室「IRINA」でティトゥリー精油を拡散し、測定を行った

実験結果です。

 

多くの研究では、精油の芳香物質の動態は

小さなチャンバー(測定器)で行われます。

 

実規模実験という点と、IAQ視点での考察という点が

非常に興味深く、アロマセラピーの研究ではないのですが

学ぶことが多く、今回のブログでも根拠の1つとしています。

 

 

「空気浄化?」or「汚染源?」

ティトゥリー精油は微生物抑制作用の研究も多く、

空間芳香においては、自然の力を借りた空気浄化を

期待して使われることが多いです。

 

では、IAQ視点からだとどうでしょう。

研究結果は、次のようになります。

 

・ 拡散後に起こる室内化学濃度の変化

  拡散後に室内のVOC濃度が上昇します。電気式の
  ディフューザーで拡散開始70分後にテルペノイド
  揮発性有機化合物(TerVOC)の濃度が2140ppbの
  ピークを記録。これは、研究で参照された一般的な
  室内環境VOC濃度と比較すると約100倍、欧州の
  曝露レベルを1桁以上も上まる可能性があります。

 

・ ディフューザー選択による大きな違い

  後述します。

 

・ 従来のテストデータが過小評価されている可能性

  研究でも触れられてますが、「放出室の容積は放出に
  直接影響を与える」と述べられており、「拡散中の
  濃度勾配の大きさに影響」があるようです。アロマ
  セラピーの安全性テストの多くは1立方メール程度の
  小さな箱(実験チャンバー)で行われてきました。
  この実規模スケールの実験により、1m3の小型チャンバー
  で得られた結果と比較すると、テルペンによっては
  曝露量を30%
〜75%も過小評価する可能性が示されました

 

ディフューザー選択の影響

実験報告から、ディフューザーによる違いを見ます。

 

  電気式ディフューザー
(加熱噴霧式)
リードディフューザー
(ブナ材)
放出特徴 瞬間型
(短時間で爆発的)
連続型
(長期間一定量保つ)
曝露形態

急性
(開始後約1〜2時間でピーク)

→ 短時間高濃度

慢性
(安定までに15時間以上)

→ 長時間継続的

IAQ影響

約6時間以上継続

最大51日間継続

仕組み セラミックプレートを加熱して拡散 材料の毛細管現象を利用した自然蒸発
精油量 約20滴(約0.70g) フラスコ1杯分(数mL)
加熱温度 68±2℃(30分以内に) 加熱なし(室温)

※ 実験内容から作成しています。拡散器の機能やリードの材質、
室内環境(温度、湿度など)、精油成分による違いは別途考慮が必要

 

リスク評価は以下のようになります。

電気式ディフューザー
(加熱噴霧式)
リードディフューザー
(ブナ材)

・濃度の急上昇による急性曝露に注意

 

・気相中の成分比率変化が激しい。1時間目と5時間目で空気中の科学的組成が異なる

・低濃度だが長期間にわたる慢性曝露に注意

 

・広い空間だと飽和せず(濃度勾配が維持)放出し続ける

※ ディフューザー選択に関わらず、換気対策は必須です。

 

ティトゥリー精油成分の液相と気相の構成比

精油は揮発性があり、液体(液相の状態)からすぐに

気化します(気相の状態へ移る)。

 

この実験結果から得られるのはIAQ視点からのリスク評価

だけではありません。

 

私たちがよく参考にする精油の成分表の構成比と

空間内での構成比が違うかもしれないという事実です。

 

つまり、精油が拡散された空気中の成分比率(気相の構成比)

は、メーカーが出す成分比率(瓶内の液相の構成比)の

組成をそのまま反映しません。

 

 

これには精油を構成する芳香物質の蒸気圧が関係します。

蒸気圧は、簡単にいうと、揮発のしやすさです。

同じ条件で比較した場合、蒸気圧の高い物質ほど

気相へ移行しやすい傾向があります。

 

研究の電気式ディフューザーによる結果を例に

①ピネン、②4-テルピネオール、で表にします。

 

まずは、蒸気圧と拡散速度です。

芳香物質 蒸気圧(Pa) 最大濃度への到達時間
① 589-599 Pa 0.6時間
② 20-37 Pa 2.6時間

 

次に、構成比(存在相対比)です。

芳香物質 液相 気相(20分後) 気相(1時間後)
①   約2.8% 約15% 約4.3%
② 約42.5% ほとんどなし 約28.3%

 

②4-テルピネオールはティトゥリー精油では主成分で

あることが多いですが、拡散後20分では気相にほとんど

みられません。ここで載せませんが、研究結果のグラフを

見ると時間が経つほどに増え、密閉された空間で

9時間後くらいに液相に近い構成比になっています。

 

ここでは、液相と気相で構成比が変わるのだという

認識を持つことが重要です。

 

メーカーやロットごとに芳香物質の構成比が違うこと

ディフューザーによる違いもあることは、別途、

考慮していただきたいと思います。

 

まとめ

精油の空間芳香はリラクセーションを始めとする多くの

面で良い評価も得られますが、IAQ視点では、精油の拡散

によって引き起こされる室内汚染物質レベルは無視できない

とわかります。また、精油の影響を考慮する正確な測定を

行うために、本格的で実規模の設備で行う実験の重要性

を示しています。

 

健康への影響(考察)

冒頭でも触れましたが、重要なことなので再度お伝えします

 

この記事は、「精油が安全か?危険か?」を問うものでは

ありません。特に健康への影響は、WHOガイドラインでも

「確信できる根拠がなく、さらなる検証が必要」と現時点で

言及されています。

 

健康への影響はあくまで「可能性」であり、

アロマセラピー実践における注意事項としてお取りください。

 

二次生成物とハウスダスト

すでに前述した通り、空間に放出された精油の芳香成分は

化学物質の一つであるVOCと認識します。

このVOCは、同じく室内空気質の発生源であるオゾンなど

と酸化反応することで、二次生成物や汚染物質となり

曝露される可能性が指摘されています。

 

二次生成物(ホルムアルデヒドや二次有機エアロゾル)には

元の物質とは異なる性質を持つ化合物が含まれるため、

精油そのものだけでなく、反応によって生じる物質も含めて

考える必要があります。

 

また、二次生成物はとても小さな粒子ですが、重力により

時間をかけて床に降り積もり、ハウスダストを構成する

一部となる可能性があります。

 

 

参考までに。

 

オゾンの発生源となるものは、コピー機やプリンターなどの

OA機器、他にも空気清浄機があります。

 

室内で複合曝露の発生源となりやすいのは

建築材、塗料やワックス材、家具、そのほか

生活雑貨類(洗剤、芳香剤、化粧品、衣類など)も

含まれ、現代生活では身近に多く存在します。

 

曝露リスクと健康影響

室内空気中の化学物質への曝露は、物質の種類、濃度、

曝露時間、個人の感受性などによって健康影響が異なります。

 

精油の空間芳香についても、こうした化学物質への曝露

という視点から考え、健康上や年齢、生活環境によって

配慮が必要な人がいることも考慮する必要があります。

 

 

最後に(次回予告)

今回の内容は、「自然の恵み」を提供し「健康に貢献する」

アロマセラピストにはショックな事実かもしれません。

(私はショックを受けました…)

 

しかし、これは精油を危険視するものではありません。

IAQ視点から精油の科学的動態を知ることで、プロとして

「安全で心地よい空間デザインをする」助けになると

前向きに考えることができるのではないでしょうか?

 

次回はついにシリーズ3回目です

IAQ視点での空間芳香ガイドラインの案を作成してみます。

 

最後までお読みただき、ありがとうございました!

 

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参考文献とキーワード

今回のブログ作成にあたり、以下の文献を参照しています。
興味のある方はぜひご確認ください。
海外の研究・ガイドライン
  1. Angulo-Milhem, S., Verriele, M., Nicolas, M., & Thevenet, F. "Full-scale determination of essential oil diffusion: impact on indoor air quality" (実規模実験室「IRINA」を用いた精油拡散の室内空気質への影響に関する研究報告)
  2. Angulo-Milhem, S., Verriele, M., Nicolas, M., & Thevenet, F. (2021). "Indoor use of essential oils: Emission rates, exposure time and impact on air quality." Atmospheric Environment, 244, 117863
  3. Su, H. J., Chao, C. J., Chang, H. Y., & Wu, P. C. (2007). "The effects of evaporating essential oils on indoor air quality." Atmospheric Environment, 41, 1230-1236.
  4. World Health Organization (2010). "WHO guidelines for indoor air quality: selected pollutants." (WHO 室内空気質ガイドライン:選択された汚染物質)
日本の研究論文・報告
  1. 吉田弥明, 木村愛, 羽鳥友康, 山田誠, 滝欽二, 山田雅章 (2004). 「スギムク材内装モデル居室における揮発性有機化合物 (VOCs) の放散挙動」 『木材学会誌』 vol. 50, No. 3, p. 168-175
  2. 神野透人, 香川(田中)聡子, 小濱とも子, 宮川真琴, 吉川淳, 小松一裕, 徳永裕司 (2007). 「室内空気中の総揮発性有機化合物 (TVOC) に対する芳香剤・消臭剤の影響に関する研究」 『国立衛研報』 125, 72-78.
  3. 高木麻衣, 吉永淳 (2009). 「日本人小児のハウスダストを介した化学物質曝露のリスク評価」 『室内環境』 Vol. 12, No. 2, pp. 103-114.
  4. 松木秀明 (1998). 「化学物質による室内汚染」 『大気環境学会誌』 第33巻 第2号, A19-A29.
  5. 松村年郎 (1996). 「化学物質による室内空気汚染 ―VOCとホルムアルデヒドについて―」 『大気環境学会誌』 第31巻 第6号, A154-A163.
キーワード

室内空気質, IAQ, 室内環境, 建築環境衛生, 室内汚染, 大気環境学 

 

空間芳香と室内空気質① アロマセラピストが知っておきたい室内空気質(IAQ)とは

 

精油の芳香空間は最も気軽な方法として紹介されます。

 

テキストや教室でアロマセラピーを学ぶ中で

妊婦さん、乳幼児がいるご家庭、持病がある方など

”注意が必要な方”に対し、空間芳香に関しての

安全性基準がほぼ確認できない…。

 

”直接、精油が触れない”ことから、

危険性が低いと考えられています。

 

本当にそうなのか?

 

今回の記事の出発点です。

いくつかの文献を読み、行き着いたキーワードが

【室内空気質(IAQ)】です。そこから

得た知識はインパクトの大きなものでした。

 

空間芳香を考えるなら、

【室内空気質】という視点も必要になる

 

 

最初に留意しておいてほしいことは、このシリーズは

「精油は危険か?安全か?」という記事ではありません。

 

空間芳香をより安心して楽しむための知識。

 

また、アロマセラピストの専門家として視点を増やし

クライアントの環境を考慮したご提案ができるスキル。

 

そのための記事として、シリーズ最後まで

お付き合い頂ければ幸いです。

 

 

室内空気質(IAQ)とは

漢字から受け取る情報そのまま、英語でも

Indoor Air Quality 頭文字より IAQ です。

 

実は、WHOや厚生労働省などの公的な機関から

言葉の定義を探していましたが、見つからない。

 

そこから、これは1つの考え方なのだと分かりました。

 

IAQの考え方を知ることで

室内の空気を健康の視点から考えることができる

 

「健康からの視点」

この視点はアロマセラピストとして欠かせない!

 

じゃあ、なぜ今まで私のアンテナにかからなかった?

アロマセラピーの学習に項目がない?

 

この考え方は「建築環境工学」や「衛生環境学」の

分野のものだったからです。

 

建築内部の空気環境が、そこにいる人々の健康や快適性

にどのような影響を与えるか?を考えるときに必要なのが

室内空気質(IAQ)の捉え方(考慮事項)なのです。

 

WHOは、この考え方に基づき、室内空気中のさまざまな

汚染物質についてガイドラインを公表しています。

 

参考までに。

ガイドラインブックの原本こちらです(PDF)

WHO Guidelines for Indoor Air Quality: Selected Pollutants

 

https://iris.who.int/server/api/core/bitstreams/202feb0d-06e8-418d-8e38-8927ec2d166b/content

 

2009年に策定され、2010年に出版されています。

 

ちなみに、WHOは2021年に『大気質ガイドライン』にて

グローバル基準をアップデートしましたが、

主に屋外大気に関するもので、

室内環境に特化したものは、これが最新です。

 

 

すごいボリュームなので、全て読んだわけではないです。

Introductionだけでも一読の価値あり。

 

ヒトは水と食べ物を定期的に、そして特に、

空気は継続的に供給される必要がある。

(中略)

最低限の質の空気と水を自由に手にする

ことは基本的人権

 

といった冒頭で始まる文章は、当たり前として

存在している空気の質というものを見直す

きっかけになりました。

 

翻訳はざっくりとしたもので申し訳ないですが

原文で supply - 供給 という単語を使い、

基本的人権としたとこが、私には衝撃的。

 

中でも触れられてますが、「許容範囲での質の確保」

ということで、私たちがコントロールできるものは

知識をもって対処していきたいと感じました。

 

アメリカのデータベースNCBIでもみれるようなので

部分記事として添付しておきます。

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

今回の記事で、全て理解する必要はなく、

ここでは「室内空気質(IAQ)」という考え方を

知って貰えば十分です。

 

 

なぜ世界はIAQを重要視するのか

この問いに答えるのはWHOのガイドライン。

 

ガイドラインを策定するに至る目的は

知識の共有であり、マインドセットになります。

 

注意すべき点は、 ”職場”は明確に除外されている

ところです。つまり、一般的な生活空間を含む

ごく小さな室内環境への適用を推奨しています。

 

「私たち」一人ひとりの問題であり

公衆衛生としての課題となります。

 

そして、国はその「統一的な基盤」を整えるため

法的強制力を持つ基準を持つことも課題の1つ。

 

 

室内でも汚染物質にさらされる

現代人は室内で過ごす時間が増えています。

 

外気から侵入してくる汚染物質に加え、

室内活動で使う電化製品や生活習慣、

室内で使用する製品などからも放出される

汚染物質、または、汚染物質の発生源など

室内にも因子が複数存在します。

 

 

健康に及ぼす影響となる可能性

WHOは室内汚染物質の健康に及ぼす影響は

大きいと考えています。

 

「室内空気は健康の決定要因」とし、実際、

発展途上国において、屋外の大気汚染物質への

暴露による影響よりも大きい可能性が示唆されている。

 

ただ、現時点で次の2点に注意が必要。

 

  1. 室内空気質の管理に対するアプローチ
    屋外空気とは異なるアプローチが必要。
    室内環境は実に様々である。

    ・屋内発生源の存在
    ・潜在的な汚染物質の存在
    ・化学物質の複合的影響の考慮

    1つ1つの汚染物質の基準値が下回っても、
    現実的な科学的評価が困難。

  2. 十分な根拠や数値化を示せない

    現時点で、このガイドラインはあくまで
    「健康リスクを低減するための
    実現可能なアプローチを可能にする」
    ことを目的としている。

    私たち個人がコントロールできる範囲で
    許容範囲でのIAQを達成しよう!ということ。

 

室内には、室内特有の発生源があり、かつ

健康リスクが科学的に証明されているのです。

 

アロマセラピーは室内空気の1部となる

汚染物質?精油に関係ないやんと思ったアナタ。

私も危うくスルーしそうになりました。

 

残念ながら関係してきます。

 

現代の生活環境において、香りのない生活を

おくることは難しいでしょう。

生活用品や掃除用品、リネンや雑貨、

どこかしら香りが付与される製品が多い。

 

天然抽出の精油なら問題ない?

 

そんなことはありません。

IAQで挙げられる化学物質にある

「揮発性有機化合物(VOC)」に精油は該当します。

 

精油を拡散器などで空間に広げるとき

「いい香り」による快適空間を作るとともに

精油のVOCが室内空気の一部を構成します

 

つまり、IAQに変化をもたらすのです。

 

空気中にある物質の中でもオゾンとの結合により

ホルムアルデヒドや二次有機エアロゾルなど、

「二次汚染物質」を生成する可能性が

指摘されています。

 

 

空間芳香を考えるとき避けれない視点

精油が空間でどのように振る舞うのか。

 

精油はずっとお伝えしているように

【芳香性の揮発性有機化合物の混合体】です。

 

 

IAQの視点でアロマセラピーの空間芳香を考えるとき

私たちは「香り」を感覚だけでなく、

「空気中に存在する化学物質」と捉える必要があります。

 

 

室内環境が人々の健康にどう影響するか?

この考え方がIAQでしたよね。

 

つまり、個々の芳香物質の挙動を追う必要がある。

 

これに関しては非常に興味深い文献があり

次回はその文献を軸に話を進めていきたいと思います。

 

最後に、この記事は「精油は危険」という結論を導く

ためのものではありません。むしろ、空間芳香をより

適切にコントロールするために、まず

室内空気質という視点を共有することを目的としています。

 

 

 

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

 

アロマクラフトで精油は本当に混ざる?基材ごとの安全性を科学的に解説

 

 

アロマセラピーの人気は高まり、SNS上でも

簡単アロマクラフトレシピは拡散されています。

 

しかし、アロマクラフトの精油と基材を安全性

観点で言及する発信をあまり見かけません。

 

アロマクラフトでは、精油と基材の相性によって

安全性が大きく変わります。この記事では、植物油、

無水エタノール、水、グリセリン、牛乳などの基材と

精油の関係を、溶解・可溶化・乳化という観点から

科学的に解説します。

 

 

 

精油は成分組成が複雑な混合物

アロマクラフトを行う場合に、必ず再確認が必要

なことがあります。知識ではなく、実践レベルで

重要なポイントになります。

 

精油は数十〜数百の芳香成分から成り、全ての

動きや変化を追うことが難しく、十分に解明が

なされていません。

 

個々の単離成分を注視するだけでなく、

構成する成分の含有率や相互作用も考慮しな

ければならず、安全性の検証・評価が不十分と

言われる理由の1つもここにあります。

 

また、芳香成分は反応性が高い物質なので

(そこに薬効が期待されるわけですが…)、

長期保存時の挙動も予測が困難とされます。

 

このことを踏まえた上で、アロマクラフトを

楽しむためにはどうしたら良いでしょうか?

 

可能な限り、安全性を高めるための知識と

知識を基盤とした実践を心がけることです。

 

 

精油が「混ざる」とは?

多くの人が勘違いしてますが

「混ざる」=「溶ける」ではありません。



 

「溶ける」現象において、溶ける物質を【溶質】、

溶かす物質を【溶媒】と言います。そして、【溶質】が

【溶媒】に溶けて均一な液体【溶液】になることを

【溶解】と言います。これが「溶ける」です。

 

例えば、アロマセラピーでは

【溶質】が精油、【溶媒】が植物油や無水エタノールです。

 

 

では、アロマクラフトにおける「溶ける」現象を

大きく5つに分け、科学的に整理してみます。

 



 

  現象 見た目 状態

①

溶解

完全に透明 分子レベルで均一に溶解し、安定。
② 可溶化 透明〜半透明 溶質がミセル形成または共溶媒作用により均一に分散。
③ 乳化 白濁 微粒子で分散。
④ 分散 一時的な白濁 時間が経つと分離し、不安定。
⑤ 分離 層に分かれる 混ざってもいない。

 

 

①は溶解、「溶ける」。②〜④は分散、「混ざる」。

ただし、②〜④の「混ざる」には違いがあります。

 

②③は、均一化のための補助となる物質が

あります。④は ”振る” など、何らかの力を加えて

一時的に均一化した状態です。

 

「混ざる」と一口に言っても、その状態はさまざま。

一時的な分散では原液が残る可能性があり、

安全性の観点から注意が必要です。

 

 

ここで、【分子の極性】についても少し触れます。

 

分子構成に電気的な偏りがあるかないか、が関係します。

例えば、水分子は電荷を帯びているため「極性分子」、

一方、油脂は電荷が帯びておらず「無極性分子」です。

 

同じ極性を持つ分子同士はよく溶け合います(溶解する)。

「親水性」や「親油性」は、この極性による性質です。

 

 

さて、表に戻り、アロマクラフトで使う基材と照らし

合わせて解説していきたいと思います。

 

①溶解 - 植物油脂と精油

精油は植物油によく溶けます。

実践レベルでも精油は植物油脂に「溶解」し、

分子レベルで均一に溶け合っている状態です。

安全性は非常に高いと考えられます。

 

植物油脂(植物オイル)で希釈された精油は原液で

肌に付着する心配もなく、最も安心な基材です。

 

ただし、精油や植物油脂そのものに対しての刺激

やアレルギー反応が無くなるわけではありません

ので、この点においては注意が必要です。

 

②可溶化 - 無水エタノールと精油

精油は無水エタノール(アルコール99.5%以上)に

比較的溶解します。希釈剤の1つであり、アロマクラフト

において、重要な基材として紹介されます。

 

特に、精油を水性基材と混ぜたい時に有効です。

 

構造として、無水エタノールは水にも溶けやすい

「親水性」と油にも溶けやすい「親油性」をどちらも持つ

「両親媒性」です。この性質により、例えば、あらかじめ

精油を希釈した無水エタノールを水や芳香蒸留水と

混ぜるとき、可溶化の補助となり「共溶媒」として働きます。

 

ただ、ここでも精油が化学的特性を持つ芳香分子の

混合体であることが問題になります。

 

成分組成(どのような成分がどのような比率で入って

いるか)、温度や濃度(水、エタノール、精油の芳香

成分全て)、の条件によっては、混ざらない部分が生じ

たり、何より、時間によっての変化を追うのが困難。

 

安全性は、無水エタノールのみの場合、"比較的高く"

さらに、水性基材と混ぜると、"高くない" レベルまで

下がってしまいます。

 

無水エタノールに関しては、動画がありますので

こちらもご参考にしてください。

 

youtu.be

 

 

ちなみに、可溶化では精油が極めて小さな粒子として

均一に分散するため透明に見えます。可溶化剤や界面活性

剤を用いる場合には、ミセルと呼ばれる集合体が形成

されることもあります。可溶化は2種類あります。

・水中油型(O/W型)

 一般的。私たちがアロマクラフトで作るような透明な
 化粧水やルームスプレーなど。

・油中水型(W/O型)

 日常で見かけることは少なく工業用が多いようです。
 「逆ミセル」と呼ばれる。

 ※次の説明の「乳化」とは厳密には違う

 

 

③乳化 - 精油と乳化剤

アロマクラフトで、乳化と可溶化は混同されがちですが

厳密には、違いがあります。

精油を乳化させてローションや乳液、クリームを作る

時には市販されている「乳化剤」を利用します。

多くの場合、湯煎などで乳化剤を溶かして

基材と混ぜるプロセスが見られます。

 

植物由来の乳化ワックスやレシチン、乳性タンパク質

などの界面活性を利用し、本来混ざらない水性と油性を、

溶質となる物質を粒にして、溶媒となる物質内に

細かく分散させます。

 

可溶化との違いは、見た目の透明か白濁かで区別され

ることが多く、溶質(ミセル粒子や分散している物質)

の大きさの違いによる光の反射具合で

見え方が違ってくるようです。

 

 

 

 

④分散 ⑤分離 - 精油と安定性の壁

分散と分離に関しては、イメージしやすいと思うので

詳細な説明は割愛させていただき、

ここでは、アロマクラフトにおける最大の壁

「安定性」について少し触れます。

 

安全なアロマセラピーの活用として、アロマクラフト

をする際に懸念されるのが「安定性」です。

 

「溶けた」もしくは「混ざった」と思われる

精油が、正確には、各々の芳香成分が時間経過で

どのように変化するかわからないのです。

科学的な研究データが少ない現状があります。

 

具体的には、精油の芳香成分の化学的特性が

他の物質と混ざる(溶解ではなく)際に、また、

時間をおいた際に、化学的変化が把握しきれない。

 

これには、精油の芳香成分の反応性の高さが影響

します。反応性の高さが薬効に関わることもあり、

さらに、物理的な要素(エネルギーによる変化など)

も加わり、その変化が不確かな限り、生体に作用する

メカニズムや効果、毒性や安全性への懸念が拭いきれない。

 

 

参考資料(情報源)

アロマセラピーや精油の効果効能に注目が集まる中

商業的な利用を狙った商品開発でもネックなようです。

 

私たちに直接関係ないのですが、かなり面白いレビュー

があったので、載せておきます。今回の参考資料にも

なっており、重要な情報源となっています。

 

www.mdpi.com

 

精油に関して、科学的な視点から説明されていること、

アロマクラフトでいう「混ざる」と製剤学視点からの

「真の可溶化」について見識を深めることができます。

 

これを見て知ったのですが、製剤学からの食品や化粧品など

の分野では、精油のナノカプセル化、もしくは、

ミクロカプセル化が注目度が高く、検証が進んでるようです。

 

キーワードとして

biological properties 生物学的特性

nanotechnology(nanomaterials)

physico-chemical 物理化学

などがあり、深掘りしたい方には必見です。

 

 

アロマクラフト基材について

一般的にアロマセラピーの基材として使われるものを

安全性の観点から具体的に見ていきたいと思います。

 

油性基材

精油は親油性のため、油性の基材にはよく溶けます。

  • 植物油脂
    スイートアーモンドオイルやグレープフルーツオイル
    のような常温で液体のものとシアバターやココナッツ
    オイルなどの常温で固形のものがある。
    真溶解に近いので、精油原液が触れる可能性が低く
    また時間で分離することもほとんどない。
    アロマクラフトで一般的に用いられる基材の中では、
    安全性が高い基材と考えられます。

  • ロウ(ワックス)
    植物性のホホバオイルは、常温で液体である上に
    アロマトリートメントなどでもベースオイルとして
    よく使われるほど植物油脂に近い基材。
    動物性の代表的なミツロウ(ビーズワックス)は
    熱を加えない限り固体であり、単体でアロマクラフト
    に用いられることは少ない。通常は植物油脂とともに
    熱を加えて液状にして精油を溶解する。
    配合比率によりクリームや軟膏、バームといった
    形状に違いを作ることができる。
水性基材

精油は疎水性のため、水性基材に混ざることはない。

  • 芳香蒸留水
    芳香植物を水蒸気蒸留する際に精油と一緒に
    得られる。水溶性の芳香成分を含み、
    アロマセラピーの一翼を担う基材。種類も豊富。
    ただし、精油はほとんど混ざらない。

  • 水
    精製水、水道水、ミネラルウォーターなど、
    目的に応じて使い分けるが、どれも”水”である。
    精油はほとんど混ざらない。

  • 無水エタノール(99.5%以上)
    先にも触れたように、両親媒性により水性基材と
    精油を混ぜる際に、役立つ。あらかじめ、無水エタ
    ノールに希釈した精油を使うのが王道。ただし、
    温度や濃度に限界があり、時間経過までを考慮する
    と課題も多く、安全性を保証することはできない。

  • グリセリン
    10年ほど前は希釈できると考えられていたが
    水に溶解するのはグリセリンのみで精油は
    原液のまま残る。親水性が非常に高く、むしろ、
    水だけの場合より溶解度が低くなると考えられる。

  • その他アルコール
    ウォッカや日本酒を希釈剤として紹介するのは
    危険である。精油の希釈にはアルコール度数が
    99.5%以上のものが推奨される。
    精油は一部溶解するが、高濃度に芳香成分が
    残り原液付着の可能性があり、安全性は低い。

  • ジェル
    アロエジェルやキサンタンガム、カルボマー
    など水性成分をジェル状に緩く固め、精油の
    芳香成分を分散して安定することはできるが、
    溶解するわけではなく、うまく混ざったように
    見えても、原液のまま散らばっている可能性も。
    精油をそのまま混ぜただけのジェルは、
    安全性が高いとは言えない。

  • 牛乳
    脂肪分や乳性タンパク質によって精油が混ざると
    説明されることがあるが、実際には十分な溶解
    が期待できるわけではない。牛乳の構造上、芳香
    成分の溶解性は限定的であり、成分によって挙動が
    異なるので注意が必要。安全性が高いとは言えない。
    また、芳香成分によっては、高脂肪の牛乳ほど
    溶解が困難という研究データ(※)もある
    ※ 最後に添付する資料もぜひ参考に!

 

 

粉体(パウダー)

精油は、粉体に溶解しない。粉体により、水性基材に

混ざったり溶解したりする。精油を使用するときは、

あらかじめ無水エタノールに希釈したものを粉体に

混ぜるようにすれば、比較的安全と考えられる。

  • クレイ
    粘土鉱物。泥パックなどに使う基材。
    カオリンやモンモリロナイトが代表的。肌の保湿
    やミネラルなど栄養補給や肌を整えるのに良い。

  • 重曹
    アロマバスなどで使用されることが多い。正式名称
    は炭酸水素ナトリウム。弱アルカリ性のため、
    酸性の皮脂や垢を中和することで、肌表面の洗浄や
    精油成分を吸収しやすくするのに役立つ。
    また、お湯の肌触りを柔らかくする効果もある。
    掃除や吸湿剤として使用する場合は、身体への
    安全性を考慮しなくて良いので、精油を希釈せず
    よく混ぜるだけで良い。

  • クエン酸
    重曹と一緒に混ぜて使うことで、バスボムを形成
    するで。バスボムは、炭酸入浴剤。お風呂にいれ
    水に触れさせ、発泡して楽しむのにも良い。
    形成時に水分量が多いと発泡してしまうので、
    精油を希釈した無水エタノールはスプレーにして
    噴霧しながら作るとうまくいく。

  • 塩(ソルト)
    バスソルトとして入浴用基材として人気。天然の
    ものはミネラルも豊富に含むので、美肌効果(古
    い角質を落とす)や血流促進効果が期待できる。

  • 粉ミルク(脱脂粉乳)
    粉体基材の中では、比較的精油が混ざると考えら
    れる。牛乳から脂肪分を抜いた乳性タンパク質
    の粉なので、界面活性効果が期待できるが、
    バスミルクとしての使用に限る。また、溶解
    は期待できないので、原液付着の可能性も考慮
    が必要で、安全性も高いとは言えない。
    次の参考資料もぜひご覧ください。

 

参考資料

アロマクラフトとしての記事ではなく、
精油の微生物に対する研究データだが、芳香成分が牛乳
に溶解しないという点での科学的根拠として使える。
概要(ABSTRACT)だけでもぜひ!

 

Impacts of Sample Preparation Methods on Solubility and Antilisterial Characteristics of Essential Oil Components in Milk | Applied and Environmental Microbiology

 

 

まとめ

いかがでしたか?

アロマクラフトを安全性観点から見てきました。

 

結論として、安全性は白黒で判断できるものではなく、

知識と工夫によってリスクを下げていくものです。

学びを深めるほど、精油がいかに取り扱いの難しいもの

であるかがわかってきます。

そして、「効果・効能」や「メディカル」などの用語が

簡単に使えないことが倫理面からも理解できます。

 

 

精油やアロマセラピーの人気は高まりつつあり

個人だけでなく企業も商業ベースでの利用に

関心を寄せています。

 

そのおかげもあって、精油や芳香成分に関しての

研究データは年々増えつつありますが、

製剤学や薬学など、かなり専門的な分野のもの

が多く、アロマセラピーの活用や実践レベルに

落とし込むのは難しく思われます。

 

では、アロマセラピーを日常で楽しむことが

できないか?と言えば、そうではありません。

 

私たちが扱うものが何であるかを把握し、

濃度や適用方法、使用者の体質なども

総合的に判断して、可能な限りの安全性を持って

日々の実践やアドバイスに活かしていく。

 

この考えを根底に、アロマセラピーを楽しむ

習慣を育んでいけるはずです。

 



 

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

誰かのお役に立てますように…

 

アロマセラピーとは?後編 統合医療に向けてアロマセラピストが知っておくこと

はじめに、お知らせします。

この動画は『アロマセラピーとは』の後編 になります。
 
アロマセラピーとは? マインドセット編
アロマセラピーとは?2024① 健康に対するマインドセット - アロマセラピールーム燈和(Hiyori)
アロマセラピーとは? 前編アロマセラピーとは?前編 ー曖昧な定義ー - アロマセラピールーム燈和(Hiyori)
また、英語の参考資料はオリジナルのものですので必要に応じて、翻訳機能をご利用ください。

 
 

さて、本題に入ります。

今回内容は、医療に関するものです。
 
ですので、前編で解説したように、日本における
アロマセラピーのイメージは、一旦、置いてください。
 
アロマセラピー本来の、「植物の香り成分をつかった治療」
の意味・役割としての分野であり、アロマセラピーの

理論や精油の化学的な知識が重要視されます。

 

 

 

医療とは何か?

 

医療現場で、アロマセラピーは【代替医療】や【補完医療】
そして、【統合医療】の全てに関わってきます。
 
まず、医療とは何か?っていうところを共通認識として
しっかり抑えて置きます。
 
【医療】は、狭い範囲でのものを指します。

 

 
言い換えられた用語を並べると
「医学の主流」「従来の医学」「近代西洋医学」など。
 
 
非常にわかりやすく、この【医療】以外はすべて
「その他療法」、と線引きされます。
 
「その他療法」は、めっちゃ広い分野をカバーします。

 

 
伝統医学 もこの中に入ります。
中医学、アーユルヴェーダ、ユナニ医学、
これら3大伝統医学などは、言ってしまえば

 

近代西洋医学より歴史長いですよね。
 
でも、歴史や長さではないし、
優劣でもない。どちらが良いとかでもない。
 
 

 

近代西洋医学を主流として、主流じゃないものは全部
「その他」に入ります。ある意味、すごく分かりやすい。
 
 
アロマセラピーは、もちろん「その他」入ってきます。

 

その中でさらに、「自然療法」や「植物療法」に入ってくる。

 

この分野に含まれるものは、多数より無数。
 
「植物療法」は、植物を使うという意味で、ある程度
絞られますが、「自然療法」は広い。
 
大袈裟にいうと、自然=この世界そのもの ですよね。
 
”ひと”も自然の一部ですので、鍼灸や整体など身体的なケア
だけでなく、スピリチュアル分野、魂やエネルギーのような
人に関わる、物理的に触れられないものも含みます。
 
表示しきれない…。
 

 

他も詳しく 知りたかったら、厚生労働省の統合医療(eJIM)

 

のページにもありますので、こちらも参考にしてください。
 
 
補完代替医療(CAM)

 

近代西洋医学が主流であって 、それ以外の療法はその他、という

 

はっきりとした線引きが、今の医療であるということを
踏まえて頂いた上で、【代替医療】【補完医療】を説明します。
 
代替医療Alternative medicine 医療と併用する
補完医療Complementary medicine 医療の代わりに使う
 

 

 

 

補完医療と代替医療は、現状で、その 同一の療法をどう使うか
の違いで、分けることが困難なため、まとめられて
補完代替医療、頭文字をとってCAMと呼ばれます。
 
補完代替医療(CAM: カム)
Complementary and Alternative Medicine 代替医療と補完医療
 

 

 

 

もう一度主流となる医療を再確認しましょう。
補完代替医療(CAM)とは決定的な違いがあります。
 
科学的根拠の取り扱いというか、科学的根拠の質です。
 

 

医療はそもそも、確実な科学的根拠(エビデンス)に
基づいたものだけを実践します。信頼性や再現性が
実証されるもの、実用性がすごく高いものだけを
採用し、臨床現場に用います。
 
 
それに対して、補完代替医療は、科学的根拠(エビデンス)
の質がすごく低いと言われます。
 
”質” というところがまた難しい。
観点というかメジャーというか、医療と並べると
基準の設定が違いますもんね。
 
現状での科学、基準となるものに対して、
科学的根拠(エビデンス)を取るのが、なかなか難しい。
特に、再現性。
 

 

そのため、入手可能な情報の中で、ベストな科学的根拠
に基づいて実践されているのが、補完代替医療です。
 
これは、すごく大きな違いです。
 
統合医療
このような局面で、【統合医療】が登場します。
 

 

医療中心として補完代替医療があり、そこに社会コミュニティ
も加わります。患者を「人」として中心に据えて考える、
包括的な医療システムが【統合医療】です。
 
統合医療 Integrated medicine
 医療と補完代替医療を統合した療法。社会的な生活環境も含め、包括的に行う患者中心の医療システム。
 
 
統合医療は、マインドセットでも触れたWHO(世界保健機構)
提唱の人を中心としたセルフケア、その集合体としてのヘルスケア、
を目的とした医療システムになります。
 
医師が主導となり、EBP(エビデンスベースドプラクティス)、

エビデンスに基づいた実践を行い、さらに、本人の社会的環境
までも考えていきます。
 
もっと広い意味で、ここに予防医学とか予後の生活も
入ってくるので、その中に私たちの仕事もあると思います。
 
それが、統合医療。
 
 
 

クリニカルアロマセラピー

 
医療とは何か、確認できたところで、
クリニカルアロマセラピーという言葉が関わってきます。
ようやくですね。
 
 
アロマセラピーの中でも特に、医療に組み込まれる、
精油(広義で ”香り”)を使った治療法になります。
 
クリニカルっていうのは、臨床という意味です。
 
なので、私は実際、医療従事者ではないので、この言葉を
使うことがどれだけ法に触れてくるのか際どいです。
 
しかし、広義で、”個人”や”ひと”の生活(人生)全体を考慮し
病気中、病気の予後、その予防までを考えると、
使い方として、「それはクリニカルだよ」って言われることも。
 
簡単にしてしまうと、趣味や娯楽と切り離し、
精油の科学的な知識や研究データを用いて、
アロマセラピーを理論的に実践する。
その類を「クリニカル」と呼んでも良いのかもしれません。
 
厳密には、医療従事者が行うのがベストだとも思います。
 
ただ、日本だけでなく、海外でも、医療現場にいる
彼、彼女らはとっても忙しい。
 
その現場を知ってるのか?って言われたら、そうではない。
 
 
ですが、先にお伝えしたように、補完代替医療がカバーする
その他の療法 ってもうめちゃくちゃ多いわけです。
 
しかもそれを、エビデンスベースで対応していくとなると
医療従事者の皆さんが、1つ1つ科学的根拠を検証し
採用(医療的決断)をしなければならない。
 
大変なことは、想像に難しくないわけです。
 
 
そこで、専門家、きちんとした機関で教育を受けた有資格者
との連携が望ましいされます。グローバルスタンダードでは。
 
この「連携」が重要。医師が主導は大前提です。
多くの場合、医療チームが組まれます。
 
 
「クリニカル」を掲げるほど、私たちセラピストは
注意が必要です。基本的に、何か心身に不調を抱えてる人に
対処していく訳ですから、
 
個人的な判断絶対しない。
 
ことが大前提。常に意識しなくてはなりません。
 
 
私も頼ってきてくれたクライアントに持病がある、もしくは、
現在治療中である場合には、主治医に1度相談して頂く
ことを必ずお勧めします。
 
クライアントの安全が第一です。お互いのためにもなります。
 
参考資料のご紹介
 
『Perspectives on the use of aromatherapy from clinicians attending an integrative medicine continuing education event』 Amy C. S. Pearson, et al
 
少し古い2001年の資料ですけど、アメリカで医療事者向けの
カンファレンス会場で行われた調査です。
 
医療事者の多くがアロマセラピーに個人的に興味があって、
セルフケアや自分の家族への利用があるが、知識には自信がない。
そのため、補完代替医療として、他の療法ほど勧めることができない。
 
という事実が分かったそうです。
 
アロマセラピーの分野っていうのは、研究対象としても
補完代替医療としても、注目度がすごく上がってきてるので、
近い将来で専門家との連携や医療従事者向けのセミナーが
増えてくんじゃないかなと思っています。
 
 
 

精油の品質基準

 
次に、医療現場で使われる精油の話になります。
 
簡単に言ってしまうと、精油の品質基準ですが、
先に伝えておかなければならないことがあります。
 
日本では現状、公的な精油の品質基準というものは
存在しません。精油はあくまで雑貨です。
 
「高品質」「医療グレード」と強調される精油も
ありますので、まず抑えておきたいポイントです。
 
ただ、実際に、原料から抽出までを丁寧に技術的に
伝統的に行うメーカーもありますが、ここでは
切り離して話していきたいと思います。
 
海外セミナーから学んだ精油選択の基準
海外でも概ね、精油は雑貨です。
(フランスなど一部で、医療グレードがある)

共通しているのは、”商品説明の表示規制” です。
例えば、精油の説明で
  • 効果効能を表示する
  • 過剰に期待させる(勘違いさせる)コピー
  • 医療をにおわせる表示
など、日本と同じように法規に触れます。
 
このように、精油そのものに基準のない状況下、
医療現場や補完療法として精油を使う場合、
次のようなことを最低基準にすることを推奨しています。
 
  • オーガニック
  • 水蒸気蒸留
「やっぱオーガニックだよね♪」みたいに
ふわっとした話ではありません。消去法的観点から、

「不純物を含む可能性を排除する」

ことで、農薬や添加物などを極力さけ、
精油純度を上げて作用を見極めるためです。
 
安全性をより確実にするためだけでなく、
何らかのトラブルに対して、トラブルの
原因を精油成分に絞って判断できます。
 
また、アウトカム(結果、または結果から生じたもの)
に対しても、精油の芳香成分を評価できます。
 

さらに、アウトカムで得られた事実を客観的に把握し、
他のケースでも考慮できるようにする必要があります。
研究資料にする場合もある。そのため、
  • 成分分析
  • 保管管理
精油をロットごとに管理します。
 
成分分析は、精油が芳香性物質の混合体であることから
使用した精油がどのような組成になっているのか。
 
また、同じメーカーでも自然由来の精油は全く同じ
組成であることはありませんので管理が必要です。
 
 
保管管理というのは、精油は安定性が非常に弱い物質
です。(なので、反応性も高いと言えますが)
気を付けていても、酸化や変質を避けられないです。
開封日や保管方法も管理する必要があります。
 
 
医療現場で精油をつかうことは、振り返りや今後の課題
など、評価対象ともなるので、そういう観点からも
厳密な精油選びの基準を持つことが求められるようです。
 
 
日本の医療現場
2025年に【日本アロマセラピー学会】の
フォーラムを視聴させて頂きました。
 
この団体は医療従事者を中心としており、日本における
”真”のクリニカルアロマセラピーを扱う団体です。
 
活動内容に、精油の品質基準への取り組みもありました。
 
現状で、日本ハッカやチョウジなど、
『日本薬局方』にある精油もあることは知ってましたが
実際に、アロマセラピーにおける”精油”としての
基準ではないようです。
 
余談ですが、興味ある方に参考URLも載せておきます。
日本アロマセラピー学会にも所属しておられる
医療法人長谷川会湘南ホスピタルの佐藤玲子さん。
 
2025年のガットフォセ賞を日本人で初めて受賞される
という快挙を成し遂げた方です!発表を聞いたときは
「日本にこんな方が居たんだ!」と興奮しました。
 
医療従事者の方には、私のこのブログなんかより
絶対に役立つので、必見です。
 
 
医療現場でのアロマセラピーを拝見し
個人的な感想になりますが、やはり地道で堅実な実績を
積み上げたおられることに感服しました。

私たち一般のアロマセラピストは、ついついアロマの
主観的体験の成功談を感動的に伝えてしまいますが、
彼・彼女らの小さな安全性を客観的視点で
積み上げる姿勢を見習いたいと思いました。

アロマセラピーを必要とする人に届ける活動
を邪魔したくないものです。
 
 
補完療法・セルフケアサポート
医師でも薬剤師でも看護師でもないアロマセラピストは
存在価値はないのでしょうか?
また、補完セラピーを実践するべきではない?
 
私、深く考えた時期がありました。
 
「補完療法としてのアロマセラピー」の定義をどこまで
の範囲を許容するかにもよると思いますが
 
十分に必要とされるケースはあるはずです。
 
例えば、自宅療養や予後の経過観察中、
”持病”として生活の一部として過ごすとき。
高齢者、妊婦さん、乳幼児、などなど。
 
健康の定義が大きく変わり、ウェルビーイングや
QOL(生活の質)を考慮すると
アロマセラピーをセルフケアに取り入れたいけど
サポートが必要な方もいると思います。
 
このような場合、医療従事者ではないアロマセラピスト
であっても、医療現場の厳格さをもって、
補完領域としてアロマセラピーを実践する意識が
必要になります。
 
 
大事なのは、「私は、香りの専門家」という線引き。
医療との線引きです。
 
 
線引きのために、医療の知識は必要になります。
健康の概念や心理的なサポートの知識も。
 
だけど、自分の領域以外は専門家に渡す意識を
もつことが何より大切な姿勢だと思います。
 
 

アロマセラピーが利用される "医療" の例

 
現状で、アロマセラピーがどのように使われているか
調べました。基本的に海外情報ですけど、
頻度の違いで、日本でもそう変わらないです。
 
実際、海外である程度実証されてるっていうものが
日本に入って きてるっていう印象もあります。

他にも、QOL(生活の質)やウェルビーイングがアロマセラピーの効果が期待できるケースです。
治療中の治療中の不安、社会復帰後の不安、など感情コントロール、ストレスコントロール、モチベーションなどに対し、使われています。

 

 

 

 

 

実際、臨床で使われる分野として
精神科、産婦人科、 外科、脳神経外科、など
症例研究やクリニカルトライアルなど
エビデンスの量も多く、進んでいることが実感できます。
 
 
臨床現場では、確実性・安全性・再現性が求められ
「その他医療」の難しさを考慮しても、堅実さが大事。
 
繰り返し使い安定させる、少しずつ積み重ねていく
印象があって、生化学的・薬学的アプローチよりは
ほとんどが心理学的アプローチが多い気がします。
 
 
参考URLの紹介
 
参考資料として、PubMed(パブメド)に掲載されている
「クリニカル アロマセラピーの定義」です。
Clinical Aromatherapy/  Ashley J. Farrar, et al
 
PubMedいうのは、簡単に言うと、世界中で広く参考にされる
エビデンス(科学的根拠)の検索サイトです。
 
アメリカの国立医学図書館内、国立生物科学学情報センターが
作成してるデータベースです。公式文書やセミナーでも
よく出てきます。
 
 
このクリニカル アロマセラピーの資料に戻ります。
これは詳細な記述になってまして、精油に も関しても
触れてくれてます。医療従事者向けのもので、
病院の、ナース向けの教育に も使われてるようです。
 
 
次に、こちらも良かったので紹介いたします。
 
Aromatherapy With Essential Oils (PDQ) - Health Professional Version/  National Center Institute
 
 
厚生労働省 の統合医療サイト(eJIM)からのリンクなので
eJIMからもアクセスできるものです。
 
これもアメリカの国立が研究所が 配信してるもので、
癌に関わらず医療に取り込むためのアロマセラピーの情報が
すごい詰まってます。
 
いろんな分野で のリサーチのリンクが貼ってあって、
定期的に更新されてるようなので、興味のある方は 是非。
 
 
ちなみに、再度、厚生労働省の統合医療サイトのリンク↓
 
 

統合医療に向けての課題

 
統合医療に向けての課題は大きく3つあります。
 
エビデンス(科学的根拠)の質
 
現実的に、今時点の「科学」観点で、質を上げるのが非常に難しいとされています。
 
「その他医療」の多くが施術者のスキルや経験による
ところが大きくて 個人差があると言われています。

 

加えて、基本的に「その他の療法」は、症状に対する
【対処法】ではなく、人により寄り添う【ホリスティック】
ケアを重んじる場合が多い。

 

 

【ホリスティック】ケアでは、全体のバランスを見たり

 

現代ではここに”社会性”、つまり、コミュニティや
置かれる環境までも考慮していく。
 
 

 

中心に置くのは、【症状】ではなく【個人】です。

 

人それぞれ持ってるものが違う。
 
 
また、施術者も人であるので、人と人との間に生まれる
信頼関係や施術方針標準化する、そして、再現性を持たせる
医療の根本をなす、科学的根拠を取るって
難しいと思いません?本当に本当に難しいと思うんです。
 
もう少し砕いていうと、
誰が誰に対しても同じ効果を出す
ことができない。
 
科学の根本である【客観性重視】と
ケアの根本である【主観性重視】との違いとも言える。
 
 
大事なのは、この両面のバランスですよね。それは周知の事実
なので「統合医療」という考え方が出てきたのだと思います。
 
現在、様々な評価法や検証法も出てきているようで
それ自体も検証が必要なので、議論も交わされています。
 
今後に期待ですね。
 
情報の妥当性と教育
次に、教育です。
 
医療だけの問題ではないですが、オンライン化が進む
現代では、グローバルに情報を得ることができます。
 
情報が溢れすぎて、信頼性とか妥当性とか
実証に向けての、確実な有用性を見極めるのが、
めちゃくちゃ難しい時代です。
 
もちろん、教育の対象は、医療関係者だけじゃなく
私たちみたいな単独活動の実践者だけでもない。
 
WHOが人中心の医療を目標としているだけに、
意思決定をする患者さん自身、そして、ご家族
という一般人も含みます。つまり、
 
正しい知識提供がすごく重要視されてきています。
 
 
ここでも参考とした資料を上げておきます。

Overview of Integrative, Complementary, and Alternative Medicine/  Denise Millstine, MD, Mayo Clinic www.msdmanuals.com
メイヨークリニックという病院の医師が書いた記事です。
この病院は、アメリカで患者中心の医療を実践し、
社会的評価の高い病院です。クリニックという名前ですが
教育機関も含む大病院のようです。
 
また、発行元 の、MSDマニュアルっていうのも
ちょっと前に調べた時は名前違ったので、少し混乱しましたが
こちらも1899年から医療従事者や薬剤師に向けた情報を
提供し てきた信頼性の高いジャーナルです。
 
今では専門家と消費者に分けて、医療と健康情報を
提供しているようです。
 
 
この資料、めちゃくちゃ分かりやすいんです!
 
医療(従来の医療)と補完代替医療に関して、現場を知って
いるお医者さんが書いてるので、統合医療に 向けての
アロマセラピーを考えていく上で役立つ情報で詰まってる。
 
品質(規格)の統一化
 
アロマセラピーだけの課題としては載せていますが

 

「精油とは」の動画のとこでも、しばしば触れてますが
アロマっていうのが同種類の植物でも、環境によって、
すごく多様 なんですよね。
 
”環境で多様性が出る” というのは、育つ環境や
精油の抽出方法とかでも、すごく変わってくる。
それにより、同じ品種の植物から抽出する精油でも
芳香成分の組成が変わるわけです。
 
この辺りが「科学的」の難しさ。
再現性とか 実用化に向けるとき、立ちはだかる壁。
 
医療品 取り扱いとしての規格が特にない
というのは、先ほどもお伝えした通りで、
精油の品質を統一化し、規格化するのも非常に難しい。
 
 
さらに、香りという性質の問題もある。
 
香りが個人の経験や好み、感情にも影響するのるため
主観的要素を大いに含むこと。個人差が大きい。
他の療法 よりも、すごく差が出てくる。
 
 
まだある、その他”壁”
 
香りの研究や評価において、大きく問題視されるのが
プラシーボですよね、プラセボ効果の影響、です。
 
香りは、存在感があるので、「あ、アロマの実験だな」って
分かってしまって、ブラインドテストが難しいようです。
香りが何かを期待させ、それが値に影響を及ぼす可能性です。
 
そして、アロマセラピーだけではなく、補完代替医療(CAM)
では、研究において、アプローチの標準化が困難とされます。
 
具体的に、アロマセラピーを例にすると、
同じ症状に対して、セラピストによって 選ぶ精油、
もしくはブレンドが変わってきたり、適用方法も
変わってきたりするのです。対象者の好みもありますし。
 
適用方法というのは、芳香だけとかタッチセラピーを
併用するとかになります。
 
 
ざっと上げただけで、これだけあります。
 
自然療法・植物療法観点でいうと、どちらかというと
利点となるものもあります。
 
しかし、エビデンス(科学的根拠)の質を高める時に、
超えるべき壁となるのです。
 

 

 

 

統合医療に向けて、求めらるもの

 

 
私が 考える中であげてます。
 
 
理論的思考と専門性

科学も社会も、すごい日々進化しています。

 

特に、パンデミックの時期に止まっていた分、この1~2年で、

研究だけでなく、考え方そのものにも、新しいものが

どんどん発表され、検証されている印象。


実際に私、2024年に英国のとある団体のセミナーを
受講させて頂く機会がありました。


簡単にいうと、「リサーチプログラム」の一環で、
アロマセラピストを対象に研究分野の基礎知識を
レクチャーして頂けました。

日本で、これだけ本格的でボリュームのある講座
を受けれるなんて、オンライン時代に感謝です。

 

本題に戻りますが、そのプログラムで多くを学びました。

正直、想像以上。

 

科学的根拠をどのように見て、選択(決定)していくか…。

 
リサーチの方法も評価方法もたくさんある。
そして、実践的に使う時、効率よく建設的に繋げるために
やるべきこともたくさんある。

 

 

講師陣は言ってくれました。

 

医療現場やチームじゃなくても、個人レベルで実践すべき。1つ1つの実践のクオリティを上げていくことであなたも科学に貢献できる。

 

まず、科学的な考え方を知り、次に、理論的な思考を、

常に意識的に持ち合わせること。

 

クライアントやアロマPRのために、「あーこれ良いやん」って

飛びついて使うのではなく、しっかりとした知識と根拠を持つ。

 

アロマセラピーの専門性に科学的手段の学びも

並行して勉強していく必要はあるなと思います。

 

もちろん、日々進化してるので、アップデートも必要です。
去年も持ってた情報が今年変わってるなんてざらですので
もうやり続けるしかないかな、と。地道に一歩一歩。
 
他分野との連携
”人中心”の医療やケアを実践するとなると、
1つの専門性で乗り切れる時代ではないです。
 

 

自分の専門性をしっかりと持った上で、アロマセラピーに
できることを客観的に考えられる必要があります。
 
 
看護の面では看護師さんがもちろん専門ですし、
心理面では臨床心理士とか心理学の専門の方、
教育 だったらやっぱり教育関係の方っていうように、
 

 

全部1人ではできない。
やろうとしても、こぼれてくものが多くなってくる。
学び続ける時間と労力を考えても、常人には不可能です。
 
 
自分の専門性をしっかり持った上で、ヘルスケアを構成
するものがたくさんあることを把握した上で、
バランスを取っていかなければならないと思う。
 
理想的には、他分野とチームを組み、その中で
状況や立場を考えて自分にできることをする。
 
 
とりあえずは、今できることですかね…

 

偉そうにブログにまとめてますが、
私自身もまだまだ学ぶことも多く、経験値も欲しい。

 

 
いつの日か統合医療で、それぞれの専門性を
持って情報をシェアし、考えられる日まで。

 

 

 

 
まとめ:今後の展望
 
統合医療に向けて、EIPを中心にした図を

 

別途、用意しました。
 
 
 
オーストラリア政府のAIFSが出してる、厚生労働者が
出してるように、参考文献をいっぱいリンクしてるサイト
から抜き取り、アイデアをお借りして作り直しております。
 
情報元:
オーストラリア政府AIFS(Australian Institute of Family Studies) /Practice resources/ Short articlesより
 
 
実は、メイヨークリニック医師の資料にもありましたが
現在、よく聞かれるEBP(エビデンスベースド

 

プラクティス)ではなくEIP(エビデンスインフォームド
プラクティス)が提唱されつつあるようです。
 
恥ずかしながら、EIPを知らず、あれこれ調べた結果
このオーストラリア政府の記事が見やすかったので。

 

エビデンスベースは、大前提の土台となる考え方です。
 
EIPがEBPと大きく違うのは意思決定者。
中心となるのはあくまで当事者という点を強調してる。

 

私たち実践者が患者さんやクライアント、その家族に
対して、インフォームド、つまり、実践内容や専門知識
を説明し、共通認識を持ち、同じ方を向いて
医療を進めてくことだと思う。私は、そう解釈してます。
 

 

他の人は違う解釈かもしれないし、私の解釈がちょっと
怪しいというのもあり、情報元も参考にしてください。

 

エビデンス インフォームドアプローチという
表記も情報元からそのまま引用してます。

 

 

人中心の医療、WHOが提案してるような
セルフケアからのヘルスケアっていう面で、確かに、
EBP(エビデンスベースドプラクティス)よりこの

 

インフォームドの形を取るEIPの考え方の方が
概念的には 分かりやすいかな
 
ただ、ここでもまた断りを入れさせて頂くと、
言葉・用語は広まらなかったら消えてくので、
これも今時点の情報として見て頂きたいです。
 
 
今後、施術者だけの立場だけでなく、受け手側も
きちんと理解しているというのはポイントになると思います
 
特に、治療を受ける方は、今までは受け手でしたが
意思決定者として、本人の思うように生き方も選ぶ時代。
 
主流じゃない「その他医療」も含めて、「医学」だけ
では難しいなっていうところを、カバーしていこう
という動きは確かにあります。
 
個人主体の医療のカバー範囲の広さや、対応の難しさ
を考えると、果てしなく大きなチャレンジに見えます。
マンパワーも時間もかかるのに。
 
この挑戦、人ってすごいなって正直思います。
積み重ねですよね。失敗も成功も糧に、発展させていく。
地道に やってくことですごくいい未来があるかな、と
私も期待してます。

 

 

最後まで、お読み頂きありがとうございました!
 
 

動画視聴したい方へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アロマセラピーとは?前編 ー曖昧な定義ー

 

 

「アロマセラピーって何?」と聞かれたとき、

あなたはどう答えますか?

 

日本におけるアロマセラピーの定義は

非常に幅広く、時代や目的によっても

変化し続けている「曖昧」な分野でもあります。 

 
私がアロマセラピストとして起業して15年以上。
この期間ですら、初めの頃と今で、違いを感じています。
 
実は、3~4年前ぐらい前にも、このブログで定義しました。
もちろん、同じところもありますが、違う部分も結構ある
なあと、思っております。

 

さらに、医療業界での注目度も上がってきてるので
また5年先には、定義が変わってるかもしれない。
 
最悪(一般的なアロマセラピストにとっては)、
アロマセラピストに何らかの制限がかかることも否定できない。
 
そのような見解も含みながら、現時点での情報
として受け取りいただいたらなと思います。
 

アロマセラピーの定義(一般的)

一般的な(認知される)アロマセラピーをみてみましょう。
入りとしては、分かりやすいので。
 
「一般的」っていうのは、この日本の中です。
書籍だったり、メディアだったり、アロマ教室とか、
多くの人向けに言われてるもの。
 
アロマセラピーとは、植物の香りを用いた自然療法

アロマセラピーは、造語です。
アロマが芳香・香り。セラピーが療法。
 
フランス人の化学者ガットフォセ がご自身の体験から、
精油が治療に使えるんじゃないか?ということで、
自分の著書のタイトルとして出してきた言葉です。
直訳すると、もうそのまま。芳香療法となります。
 
歴史的な観点から解説
検索すれば2通りの表記を見ると思います。「アロマセラピー」と「アロマテラピー」です。
混乱する必要もなく、言語が違うだけで同じです。アロマセラピーが英語で、アロマテラピーはフランス語。

 

ですが、あえて特徴を入れるなら、
発生からの歴史的な影響を受けたものだと思います。

 

 
ガットフォセに始まったアロマテラピーは、その後、

 

医師のジャンバルネによって、芳香薬物としての精油、
つまり、薬理作用を期待した医療への応用に発展します。
彼らは化学者、医師という権威的立場からケーススタディや
考察を世に発表したっていう流れが有力です。
 
実際、現代でもフランスのアロマテラピーは
医師や薬剤師の管理下にあると言えます。
 
そこから、日本でもフランス系アロマは、薬学や医学など
いわゆる”メディカル”で使う印象を与えます。

 

代替医療によっていて、お薬の代用としての精油って
いうのを結構主張しているものも見かけます。
 
対して、アロマセラピーは英語なんですけど、こちらは
オーストリア出身の生化学者(諸説あり、断言は難しい)
マグリット・モーリーの影響が大きいです。
彼女は、東洋の哲学とか医学にも触れており、
ホリスティック・健康・美容っていう観点から精油を使う
基礎を築いた人です。
 
 
私もどっちかというと、こっちよりです。
心理作用からの利用だったり、補完医療、ホリスティック
という形で、アロマセラピーの実践が中心です。
 
 
このように、あえて違いを言えば、
歴史的観点の違いが現代に影響を与えています。
 
 
ただ今時点で、押さえておきたいのは、現状、
この2つの主流も境目が薄くなっていることです。
 
医療現場での利用が増えると、科学的根拠(エビデンス)が
必要となってきます。「統合医療」へ向かう流れもある。
 
さらに広い視点で、主流となる「医療」に沿う形で
代替医療と補完医療、個人に合わせたケアを考えると
フランス系・イギリス系という垣根はほぼないのが現状と思います。
 
どちらの視点も大事ですからね。
 
 

 

 

 

 

アロマセラピーの目的

 

最初からお伝えしてるように、
アロマセラピーは定義が難しい。
 
個人的には、「アロマセラピーが何か」より
「アロマセラピーの目的」を伝える方が良さそうに思う。
 
自分が実践するアロマセラピーは、何を目的に
どのような適用(用法)を採用するのか。
 
もしくは、自分の所属するアロマセラピーの協会・団体
が何を中心に教育し、どのような活動を支持しているか。
 
これからアロマセラピーを学んでいく人も
自分の目的に合わせて、理念や教育方針、システムをもつ
団体を選んでいけばいいと思う。
 
 

 

アロマセラピーの目的でよく見かけるものがこちら。
 
  • 健康・ウェルビーイング
    例)不調の改善、バランスを整える、自然治癒力向上

  • リラクセーション
    例)ストレスケア、ストレスマネジメント

  • 気分転換
    例)モチベーション、感情の凹凸

  • 美容
    例)肌のバランス、日常で香りを楽しむ

 

 
健康・ウェルビーイングに関しては、
シリーズ「マインドセット編」を先に見て頂きたいです。
 
アロマセラピーで使う精油は「香り」という性質と
「有機化合物の集合体」としての化学的性質を併せ持ちます。
そのため、どの性質を何に使うかで大きく印象が変わります。
 
趣味の気軽さや癒しの優しさ
薬にも毒にもなる厳しさ
 
当たり前のことですが、医師以外が
個人の状態や症状を診断・治療することはできません。
 
法的にできるできないかではなく、無責任で
倫理にかける行いですよね。
 
多くの人にとって、アロマセラピーの目的は
健康・ウェルビーイングであると思います。
 
 

 

 

 

アロマセラピーで使う基材

次に、基材なんですけども、精油は必ず入ります。

香りを用いた療法なので。

 

その他、よく使うのは「芳香蒸留水」や「植物油脂」

一つずつを話すと趣旨から大きく外れていき、

ボリュームもあるので、今回は軽く触れるに留めます。

 

芳香蒸留水

精油を水蒸気蒸留法で抽出するとき、共に得られる水。

水溶性の芳香成分を多く含み、穏やかな作用がある。子供からお年寄りまで使いやすい基材。

植物油脂

植物オイル。精油は親水性が高く、油脂によく溶ける。そのため、精油の希釈剤としてもよく使う。

植物の成分をオイルに浸出させて利用する進出油(ティンクチャー)も含む。

 

 

自然療法とは

 

自然療法というものにも、触れていきます。

 

自然療法っていうのは、 「民間伝統医療」もしくは、
「家庭の医学」などの分野にはいります。
 
 自然植物だけでなく鉱物も含み、その力を生活
や健康に利用してきたものです

 

人も自然に 入りますので、
人が本来持つ自然治癒力を意識する療法もある。
 
 
他にも、解釈に注意 が必要なんですけど、
「歴史的実践に基づく知恵の集大成」
「経験的医学」とも言われたりします 。
 
口承伝統的なもの、と考えてもらうと分かりやすいです。
 
おじいちゃんおばあちゃんも使ってたし 、
お父さんもお母さんも何気なくやるから効果がある
のは分かるんだけど、なぜそうなる のかわからない。
 
 
このように、根拠が不明で、説明に乏しいもの。
言い換えると、 理論的ではなく、実体験の積み重ねなので
科学的ではないとされてしまうことが多い分野です。
 

 

ただ、実際、歴史が深くというか、医療現場での歴史が
深いような漢方とかは、 一応、自然療法なんだけど、
この経験的医学が認められてることが多くて、
医療現場でも もちろん使われていたりする。
 
加えて言うと、自然療法を取り扱う人が権威がある
医師である場合、さらに信頼度は高い。
 
一般的にも、医師の「経験的医学」「伝承医学」は
科学的根拠を持つことが多いためです。
 

 

最後に大きな注意点。盲点になりがちなこと。
 
 アロマセラピーは、確かに、自然療法の1つですが
ハーブ療法との明確な区別が必要です。
 

 

芳香植物を 利用した歴史はすごく長いですが、それは
植物全体を使うアプローチ方法です。
 
原料植物から薬効だけを、芳香成分だけを取り出して
利用するアプローチ(アロマセラピー)は、1900年代
からですよね。ほんと、最近です。
 
そういう意味でも、科学的根拠や作用に不明な点が多い
ので、発展途上と言えます。特に、医療 現場では、
何やら良いらしいから使おうというノリではできない。
 
より安全で確実な方法に最善の注意を払う必要があるので、
信頼度も全然低いかなと思います。

 

とはいえ、今やすごい注目度も高く、研究も増え
医療現場でもリラクセーション利用から入ってきています。
 
現場での利用が「クリニカルトライアル」として
正式な形で論文にされると、医療決定の重要なファクター
となりますので、未来が楽しみですね。

 

 

本質的な定義

 

 
そもそもアロマセラピー とは何か。本質に迫ってみます。

 

既にお伝えしてるように「セラピー」は治療という意味になるので、
芳香分子の持つ薬理を利用した治療法ということになります。
 
精油や香りは、利用範囲が本当に広いので、日本以外では
言語的にはっきり使い分けてる感じを受けます。
 
よく 耳にするのは、「セラピューティック」という用語。

 

「セラピー」の、いわば形容詞です。
治療的に使う時、「セラピューティック(な)用法」とか
「セラピューティックに精油を使う」、のように

 

精油の化学的特性を利用するものは「セラピューティック」
が使われています。
 
対して、「アロマティック」があります。こちらもよくみます。

 

香りとしての用法になると、 それは治療というよりは、
香り的なリラクゼーションやコスメ。

 

”香り”そのものを利用するものは「アロマティック」です。
 
治療ではなく、香りの付加価値があるトリートメントという感じ。
アロマティックトリートメント、など。
 
 
私も自分が発信するような時は、なるべく使い分けていきたいと
思っています。ただ、用語(英語表記)をそのまま使うは避けたい
ので、説明か補足か、方法はその時々考えます。
 

 

次に、職種(香りを専門にする人)に関して。
 
日本で「アロマセラピスト」の中に入りがちなものを
3つご紹介します。
 
パフューマー

調香師(創香師)香りをデザインする。

芸術や文化にも通じる職種。

特に、天然香料・精油だけを使う人

エステティシャン

美容専門家美容に関する知識と基材を扱う。

精油を基材の1つとして、天然素材として使う人

アロマコロジスト アロマサイコロジー: アロマ(香り)とサイコロジー(心理学/生理心理学)を組み合わせた造語。詳細は下記。

 

 
補足として、本人がどう名乗るかによるので、

定義ではなく、実質的に精油を使う人ということで例に挙げました。

 

 

この中で、聞き慣れないもの、説明を入れる必要があるものが
「アロマコロジスト」だと思います。

 

アロマコロジスト はあの心理学をメインに、定義により
心理作用だけでなく生理作用まで含むこともあります。
活用法として「アロマコロジー」の用語を使います。
 

 

おそらく、日本で実践するアロマセラピーは、この
「アロマコロジー」に相当すると思います。
 
セラピーは治療という意味なので、治療的効果を全面に出しがち
ですが、そうなると医師法や薬機法に触れることになります。
そういった面からも本質的には「アロマコロジー」が適切。
 
ただ、アロマセラピーの人気と普及により、認知や使いやすさから
使い分けするのは難しいと想像できます。商業的にも。
 
アロマコロジーに関しては、『日本化粧品技術者会』の化粧品用語集
に非常にわかりやすい説明があったので、参考に載せます。
 
最後に、図解でまとめます。
 

 

アロマセラピーの盲点?!2つの経路による違い
「アロマセラピー」と「アロマコロジー」の補足説明的に
アロマセラピーの期待する効果の考察に影響する
2つの作用経路に関する話をしておきます。
 

 

2つだけ?と思う方もいるかもしれない。

 

少しでもアロマを勉強した人からしたら2つじゃないでしょって。

 

 
意外と、きちんと理解してない人は多いと思います。
私もこの5年ほどで急にストンと理解が降りてきた感じです。
 
<2つの作用経路>
 
香りの嗅覚刺激 心理学的分野の解釈脳刺激から情動、感情、 記憶に作用
精油の体内吸収 薬学的分野の解釈芳香成分(分子)がどのように入ってきて、身体・精神にどう作用するか
 

「大きな違い」といった理由が分かってもらえますか?
 
吸収経路ですと、基本基礎の教科書には、例えば
鼻→脳、鼻→肺→全身、皮膚→血管→全身、みたいな感じで
あの淡々と説明されますよね。
 
 
学術文献とか科学的根拠(エビデンス)観点から見ると、
「香り」なのか「精油」なのか、作用で言うと、「心理的作用」
であると個人差などの影響も考慮が必要なので、
作用経路の違いは重要になります。そして、実践・応用
においても、違いの把握が結果の違いとなり得ます。
 
心理学的作用の研究で、” 精油である必要はなかった”と
結論付けたものもあります。もちろん、考察は必要ですけど。
 
香りの刺激、香り分子の刺激、が脳に行くので、
天然で化学香料であろうと関係ないかもしれない。
 
さらに、好みや思考に関わってきたり、記憶の引き出しも
どこの部分を刺激するのかっていうのは、人それぞれです。
このあたり、心理学的になりますよね。作用として。
 
 
対して、精油の体内吸収は、人間の生理作用です。
精油は化学分子の集合体ですので、 薬理作用が発生します。
もちろん、個体差はここにもありますが、
人間の基本的構造からの作用と考えると、再現性が高くなる。
この芳香物質は、この器官でこう言う反応があった、みたいな。
具体例だと、特定の分子に反応する嗅覚受容体とか。
 
ただ、分子の集合体である精油は、相乗効果や拮抗作用も
考慮する必要があることを押さえておく必要があります。

 
 
実践する際、論的根拠や科学的根拠を探しますよね。
このように、作用経路を曖昧にしてしまうと
期待できる効果に影響が出ますし、説明に乏しくなります。
 
 

日本におけるアロマセラピー(考察・まとめ)

 
 
一通り解説した上で、もう1度、日本に戻ります。
まとめになります。
私自身の考えですので、注意してお読みください。
 
本来の意味での「セラピー」表記を使うと、治療・療法
という意味なので、法に触れる可能性がある。
 
そこで、さすが日本人ということで、「アロマセラピー 」
いうカタカナ語にいろんな定義を載せることで
曖昧にしながらも、上手く普及させていった。
 
でも多分、最初に導入した人が思ってたより、
一般層に、薄い知識で広がっていったのでしょう。
 
「一般層」ここがポイントになると思う。
 
イギリスでもフランスでも、何らかの専門知識を持つ人を
通して広がったのに対して、エンドユーザー層での広がり。
 
日本では雑貨的に娯楽や趣味のアイテムとして人気となり
今になって、業界的にも、他の分野の方でも扱いが難しい分野に
なってきてるのは確かです。
 
 
「アロマセラピー」はもはや、概念的な存在。
 
 
手元にある書籍からキーワードを 抜き出して
並べてみるとよくわかります。アロマセラピーの”どの”部分を
伝えたいかにより、定義も様々。
 
キーワード:
生活 の知恵・考え方
娯楽・趣味
メンタルケア
家庭医学
ホリスティックケア
健康促進
補完医療
 
と、アロマセラピーていう言葉を考えるだけで、
これだけの用語が出てきます。
 
 
 
後編への導入にもなりますが、
 
「メディカルアルマセラピー 」
「クリニカルアロマセラピー」
 
も、ここ数年でよく使われるようになりました。
 
精油を医療現場で使う方は問題ないです。
気になるのは、商用的に「医療」のチカラを使うこと。
 
こちらについては、この動画でまとめてます
 
 
後編では、統合医療としての利用について話します。
 
最後までお読みいただき、ありがとうございました!

 
 

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