前回、植物にとっての精油を見ていきました。
精油は植物の2次代謝産物であること、つまり、動けない植物が生息地で環境に適応して生きたいくために、自らが体内で作り出した有機化合物であるということでしたね。
そして、”精油の香り成分を化学的に見よう”ということをこの回で書く予定でした。が、甘かった・・・誰かに向けて書くほど理解できていなかった・・・(・∀・i)・・・
分かってはいたものの、ぼんやりと自分が知っているのと、アウトプット して誰かに伝えようとするのは、全然違うんですね。
そして、再度、書き出すことを目的に勉強しなおしました。
大事なことですね、アウトプット。振り返ってみて再勉強できてよかったです。
最初に断っておきますが、ここで記載するのはあくまでも”最低限”のものです。
私自身も中学高校時代に習った「化学」知識しか持ち合わせていません!
今回のこの記事で化学に興味を持って、より深い探究を行いたい方は、書籍で学ぶなり、もっとすごい専門の方のブログなどを参照なさると良いでしょう。
ということで、精油成分がうんぬんの前に、アロマセラピーを学ぶにあたり、知っておいたら便利という最低限の化学知識から入ります。化学の触りどころか、つまみ食い程度ですが、必要なところだけ分かれば良い、という観点からは適量でかと ( ´艸`)
ついに、私ごときが!の分野に突入しますが、化学分野の”ど素人”だからこそ伝わる事もあると信じて、始めて行きます。
<目次>
アロマセラピーは有機化学に分類される
※ 化学的な基礎知識を必要とされる方は、先に【知っておくと便利な用語と説明】をご覧ください
有機化合物とは、炭素(C)を共通の元素として持つ化合物です。
長い間、有機化合物は生き物が作り出すものとされていたようですが、現在では人工的に作られる有機物もあり、一般的に炭素(C)を含む炭素化合物を有機化合物としているようです。
ただし、どの分野でもそうであるように、例外は存在するみたい。例)CO2
有機化合物の特徴
- 構成する元素の数は少ないが、化合物の種類は多い
炭素(C)以外では、水素(H)酸素(O)窒素(N)硫黄(S)などが主な構成元素 - 構成元素が共有結合によるものがほとんどのため、
水に溶けにくく、有機溶媒(アルコールなど)に溶けるものが多い - 融点・沸点が低く、可燃性が高い
アロマセラピーの精油や植物油は、元素の構成からも、”生き物が作り出すもの”という定義からも、有機化合物になります。ですので、アロマセラピーは有機化学に分類されます。有機化合物の特徴を見ても、精油と共通することが多いこともわかりますね。
知っておくと便利な用語と説明
先に述べたように、あくまでアロマセラピーレベルでの説明です。
深入りするとグルグルなりますが、何だか世界を垣間見るような面白さもあるし、趣味程度に学ぶのもいいなぁ、なんて個人的には思っています。
知っておくと便利な元素記号と原子価
簡単に説明すると、「元素」は物体の原子の種類、原子価はある元素が結びつくことができる原子の数です。詳細は上の表を見てくださいね。
アロマセラピーで知っておくと便利な元素の数は少ないです。覚えちゃいましょう。
水素と炭素は、アロマセラピーで使う基材のすべての元となる「炭化水素」を作る元素です。酸素は、後ほど出てくる「官能基」によく出てきます。
窒素と硫黄は、アロマセラピーでは、ほとんどお会いしませんが、香りを特徴付けるものとして有名です。
アロマセラピーで使う基材の化学的骨格(構造)について
有機化合物の表示方法:「分子式」と「構造式」
有機化合物は分子性物質がほとんどなので、「分子式」で表すことができます。しかし、「分子式」が同じでも、その骨格(構造)の違いで性質が異なります。そこで、「分子式」ではわかりにくい骨格(構造)を表すのに用いるのが「構造式」です。
例として使いやすい、リモネンとαピネンを見てみましょう!
量の差はありますが、ほとんどの精油に含まれています。リモネンは柑橘系の香りのもと、ピネンは葉っぱなど森林系の香りを作る成分です。
<分子式と構造式の例>
化学っぽくなってきましたね〜 (´∇ノ`*)オホホ♪
まず、注目すべきは、「分子式」。どの原子がいくつ含まれている分子であるかを見ることができます。アロマセラピーで使う精油が有機化合物で良かったと思えるのが、炭化水素化合物であること。つまり、炭素と水素しかない!分かりやすい!!
リモネンとαピネンの分子式は同じ「C10H16」です。炭素10個、水素が16個で構成されています。お気づきだと思いますが、これでは構成元素はわかるものの、どのような形かが不明です。そこで、登場…「構造式」です。
さて、その構造式の説明ですが、先にリモネンの方を使って基本説明します。
構造式は、見る人の化学知識レベルで表記を簡単にしていることがあります。
全ての元素記号を入れたものが、「正式な展開図」(表の右端)です。ここを見てもらうとわかると思いますが、”知っておくと便利な元素記号と原子価”でも出てきました「原子価」が、構造式では重要になってきます。「原子価」は、原子が他の原子と結合できる手の数です。炭素の原子価は4本(説明上、”本”の助数詞を使います)ですので、元素記号「C」に対しては、必ず4本の手が伸びています。2本線になっているところは、いわゆる「二重結合」になります。そして、その手の先は、炭素か水素です。炭化水素化合物の骨格は炭素ですので、骨格のつなぎ目は炭素だと分かります。手が余っていたら、そこに水素がいるんだな、ということで、表記の簡略具合が理解度で変わってくるのです。初めて構造式をご覧になる方でも分かりやすいように、イメージイラスト(表の左端)も付けてみましたので、ぜひ見比べてみてください。
「正式な展開図」を見ると、素人から見ると、ふむふむなるほど〜となるのですが、ごちゃごちゃして骨格がわかりにくい。構造が複雑なものほど、骨格だけの構造式が見やすいといえます。
次に、αピネンです。2つありますよね。。。どちらも同じ分子です。
「分子式」と「構造式」を説明するだけならば、リモネンだけで良かったのですが、「構造式」には一つ欠点があります。それは、平面図であるが故に実際の立体構造が分かりにくい!という点です。ここは、以後、成分を見ていく上でも、注意する必要のあるポイントです。
αピネンでは、真ん中の炭素原子が浮いたような状態になっています。見る角度で、その浮いた部分がどちら側に表記されているかの違いが出てきます。
うまく説明できそうにないので、こんなものを作ってみました。
<αピネンの立体構造イメージ>
右側から見た感じ、と左側から見た感じ。構造式と照らし合わせてみてください。
青のダイヤのポイント、赤のダイヤのポイントが同じ”場所”です。平面だとわかりづらいですが、赤ダイヤのポイントが立体構造で言うと、平面に対して奥(垂直方向?Z軸方向)にあります。
そして、立体構造、という点からもう一つ。
分子には「異性体」というものが存在します。今回紹介した、リモネンとαピネンは二重結合を含みます(六角形の右上の2重線)ので、「異性体」を持つ分子になります。この「異性体」に関しては、香りの成分を化学的に解説する際にお話する方がわかりやすいと思いますので、今回は補足程度で、次回へパスしますね。
骨格(構造)による分類
文献により、分類が微妙に変わるので、まとめるのにとても悩みました。
以後の説明は私の”解釈”も入ってしまうので、繰り返すようですが、ご自身でも一度整理すると良いかと思います。自分なりに解釈が出来た時が、腑に落ちる瞬間です。
何よりも大事なポイントなので、既に、何度かお伝えしてるのですが、
アロマセラピー基材で使われるものは、ほとんどが炭化水素なので、
炭素がつなぎ目にある炭素骨格を基本としている
ことをお忘れなく。
では、まず、骨格(構造)から大きく2種類にわけます。
「鎖式」と「環式」です。
- 鎖式化合物
炭素原子が直鎖、または、分岐して繋がっている(結合している) - 環式化合物
炭素原子が環状に繋がっている(結合している)
さらに、上記2式の化合物において、炭素原子間の繋がりが1本ずつ(単結合)になっているか、2本以上(二重結合、三重結合)の結合をもつかで、「飽和化合物」と「不飽和化合物」にそれぞれ分かれます。
ここで、原子の原子価(結合できる原子の数)を思い出してください。炭素原子は原子価が4ですので、4個の炭素原子と1本ずつ手をつないでいる場合は「単結合」だけで構成されており、「飽和化合物」となります。これに対し、例えば、3個の炭素と結合している場合は、そのうち1個の炭素原子とは2本の手で繋いでいることになり、これは二重結合含む構成になるので。「不飽和化合物」となります。
鎖式と環式はイメージがあるほうが分かりますので、下図も参照してください。
環式化合物は先ほど出てきたリモネンとαピネンですね。
<鎖式化合物と環式化合物の例>
ちなみに、上記例ではたまたま二重結合を持たない鎖式と2重結合を持つ環式に分かれてしまいましたが、「鎖式化合物」でも2重結合を含む「不飽和化合物」が存在しますし、「環式化合物」でも単結合のみの「飽和化合物」が存在します。
性質的な要素を考慮した分類
骨格(構造)からの分類だけだと、まだ分かりやすいのですが、アロマセラピー関連の書籍では、性質的な要素も考慮して分類される場合が多くあります。
例えば、鎖式化合物は「脂肪族化合物」とも呼ばれており、この「脂肪族化合物」には「ベンゼン環」を持たない環状の「脂環式化合物」を含むことが多い。
では、この「ベンゼン環」を持つ環状の化合物はどうかといいますと、「芳香族化合物」と分類されます。名前からお察しいただけるように、「芳香族化合物」はアロマセラピーに欠かせない基材である”精油”の香り成分の特徴や機能性に関わってきます。
この「ベンゼン環」の構造式では、炭素原子が正六角形状(環状)に結合し、単結合と二重結合が交互に並びます。
そしてもう一つ。性質的な要素を考慮した分類として出てくるのが「テルペン化合物」です。アロマセラピーでは最重要骨格(構造)といっても過言ではありません。精油はこの「テルペン化合物」を基本骨格に持つものがほとんどだからです。
そして、この分類は「イソプレン(C5H8)」という炭化水素を基本骨格としており、また、それを単位としたイソプレン則というルールに従います。イソプレン則に関しては、香り成分を化学的に見る時に詳しく説明いたします。すみません、次回です。。。
なぜ”最重要骨格”である「テルペン化合物」を最後に持ってきたかというと、その重要さゆえに、アロマセラピーの文献でよく目にするにもかかわらず、分類となると多くの疑問を持たざるを得ない。骨格だけで分類してしまうと、どこに入るの?となるのです。私だけ?だったらすみません。というのも、「テルペン化合物」の骨格(構造)には、鎖式と環式(脂環式)のどちらもあるからです。そして、先にも書きましたように、この鎖式と脂環式は2つ合わせて「脂肪族化合物」と呼ばれることもあります。加えて、「脂肪族化合物」と「鎖式化合物」が( )を使って併記されることもある…こうなると、少し混乱を招くことになります。そこで、こう覚えましょう。
「テルペン化合物」は”カタチ”は気にせず、その”性質的な特徴”となる「イソプレン炭素骨格」を基本とした化合物である。
あえて、骨格(構造)分類をするならば、分子の形で「鎖式化合物」「脂環式化合物」「脂肪族化合物」それぞれに分類されます。でも、イソプレン炭素骨格(C5H10)を基本骨格に持っていれば「テルペン化合物」です。ちなみに、先に紹介したリモネンとαピネンは「イソプレン炭素骨格」を基本とします(正確には、イソプレン骨格が2つ結合していますが)ので、「テルペン化合物」です。
ということで、この記事では、骨格の形による単純な分類から入り、性質的な要素を考慮した分類を経て、「テルペン化合物」に至っております。おそらく、アロマセラピーに関する化学系文献では、この「テルペン化合物」と「芳香族化合物」を触れずに進めることはできないので、性質的な要素を考慮した分類で説明されることが多いのだと思います。骨格(構造)を念頭に置いて、この分類に目を通すと”?”がいっぱいになってくるわけです。
まとめます。
次の回で必ず必要になりますので、イソプレンとベンゼン環もご紹介しておきます。
<イソプレンとベンゼン環>
ここまで来て、ようやくアロマセラピーで使う基材、特に精油を化学的に見ていく頭の準備ができました。精油の化学成分を見ていくためには、さらに、「官能基」という精油の性質を特徴づける原子団と「異性体」という立体構造から見る分子構造を知る必要があります。
これ以降に続けることも可能ですが、ここで一度「知っておくと便利な最低限の化学知識」を締めます。そして、「精油を化学的に見る」ことは次回へ送ります。
きっとその方がまとまりも良くなりそうですし、書きやすいと判断しました。
では、みなさん、今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
また、次回もよろしくお願いします。
お茶でも飲んで一息入れましょう。。。(●´▽`)ナハハ