前回、「アロマセラピーとは」という内容で、一般的な説明と私説を混ぜて説明いたしました。それを見てくれた方に励まされ(?)、私の知識をもう少しマニアックに披露してみる決意をしました!今回から連載するお話は、はっきり言って、玄人志向のものになります。ですので、アロマセラピーを趣味として楽しみたい方、リラクゼーションの範囲に留めたい方は読まなくても良いかと…( 。-ω-)-ω-)-ω-)
いきなりこのページに辿り着いてしまった方、基本的なことはコチラをお読みくださいね。
実際、アロマセラピーは、学ぶほどにその深さにため息が出るほどの分野です。
課題として、精油そのものを知るための薬理学、農学、植物学、化学、物理学、そして、それを使う対象としての解剖生理学、生化学、毒物学、西洋医学、東洋医学、場合によっては、心理学や自然哲学もしくは形而上学などなど、それらの全てとまでは言いませんが、様々な分野の基礎知識を統合的に知ることが必要だと認識しています。
なので、私自身、まだ学徒であり道半ば。というか、ゴールってないよな... (´∀`; )
それに、アロマセラピーの可能性はまだ広がりを見せていますし、補完医療としての研究はまだこれからと考えますと、まだまだ深まりを見せる分野だと言わざるを得ません。
ですので、ここで書き出すものは、”アロマセラピー学”の一部になります。
以後、書き足しが必要と判断しましたら、その都度追記させていただきますね。
そして今回はその第一回目!
では、植物側からの精油を見てみましょう。
〈目次〉
植物はなぜ精油を作り出すのか
精油は植物が作り出す代謝産物、つまり、生体内にて化学反応の過程で生じる有機化合物のことです。化学的視点に立つと、人と同じように植物も常に稼働している化学工場と言えますね。そして、植物が産み出す代表的な物質の一つが、生命活動に必要なグルコース(糖質)です。みなさん、お馴染み「光合成」による産物です。それがないと生きてゆけないので、こうした代謝物は一次代謝産物と呼ばれます。糖質の他にも、一次代謝産物には脂質やたんぱく質などがあります。
これに対し、精油は二次代謝産物です。必要不可欠ではないけれど、環境の変化や進化に対応して生き延びるため(もしくは、永続的に生き抜くため)に必要に応じて生産される物質の一つになります。そのため、同じ植物でも生息地によって生産物も変わるものもありますし、各植物特性を表すものとも言えます。この他、苦味を感じさせるタンニンなども、二次代謝産物です。
一次代謝産物
生命活動に必要不可欠な物質。
糖質、脂質、たんぱく質 など
二次代謝産物
環境の変化に適応するための物質。
香り(精油)、苦み(タンニン) など
では、本題に戻ります。この項目タイトルに「なぜ」としましたが、実は植物側に立った「なぜ」の答えは、未だにはっきりとわかっていないのだそうです。そして、これからも、その確かな解答は決して得られないだろう、というのが科学の答えのようです。
そこで、次のような視点で進めたいと思います。
それでも、その可能性は多くあるようですので、ここでは、アロマセラピーと関わりが深いと考えられるいくつかの役割を紹介します。
【誘引・忌避作用】
虫や鳥を引き寄せることで受粉や種の運搬補助。
捕食や攻撃から自身を守る。
防御だけでなく、天敵の天敵を誘引。
【抗菌・抗真菌・抗ウィルス作用】
カビや有害な菌から自身を守る。
微生物の侵入と増殖、それによる腐敗を防ぐ。
【冷却(放熱)・保湿作用】
蒸発させることで熱を逃がす。
揮発性オイルの霧で包み、水分を保持。
【情報伝達作用】
植物内では、ホルモンや生理活性(治癒作用など)のような働きをする。
植物間での、ケミカルコミュニケーション作用。
このよう見ると、精油は、動くことが出来ない植物が、自身の生息する土地に適応して生きて行くために、自ら作り出す物質であることがよく分かります。そして、その役割は、私たちがアロマセラピーを行う際に期待する作用そのものであることも分かります。実際、”人間にどれだけ有用であるか”という研究だけが進められているのではないか?という疑念もありますが、植物の中での役割や機能はほとんど解明されていない。ということは、こうした作用もまだ植物の力の一部…そう考えると、その賢智は計り知れず、その恩恵を受ける私たちは感心させられるばかりです。
ちなみに、精油は主に「油細胞」の中に油滴として含まれており、少しずつ気孔から発散するか、風により擦れ合う事で油細胞が壊れて発散するかして、大気に放出されます。必要のない時は、配糖体を形成して揮発性を抑えて無害化し、細胞に蓄積しているようです。すごいですね〜ヽ(*´∀`*)ノ.+゚
精油が採取される植物の分類
植物の分類を正確に学ぼうと思うと、それだけで一つの学問になるくらいの量になりますので、ここでは、あくまで「アロマセラピー」を実践するにあたって最低限知っておいた方がよいと思われるところだけをピックアップします。
属名と種名
精油を採取した植物を同定する、つまり、その植物が何であるかを決定するために最低限与える必要があるのが、「属名」と「種名」です。構造上の特徴から与えられます。真正の精油であれば、必ず瓶に表記してありますので、確認してみて下さい。
例)ラベンダー Lavendula angustifolia
Lavendula → 属名 angustifolia → 種名
補足になりますが、表示にもルールがあります。
・属名は最初を大文字でイタリック表示
・種名は小文字のイタリック表示
これを踏まえて再び精油の瓶を見てみると、納得してもらえるはずです。
ケモタイプ
同じ属名と種名の植物でも、生息地でその特徴成分が大きく変わるものがあります。遺伝や環境要因で内部変化が起こしやすい種で、野生に生育する植物に自然と起こります。精油の役割を考えると、成分が少しずつ違うことには納得できますが、同種内での違いが大きいものは分類をさらに細かくするんですね。なぜなら、見た目は同一とはいえ、化学成分が違ってきますので、当然、香りと期待される薬理効果も変わってくるからです。そのような植物には、ケモタイプ表示が使われることになります。分類上、ケモタイプは属名種名の下になり、「ct.」の略号を伴なって、後に成分名が続きます。
Rosmarinus officinalis ct. cineole 特徴成分:1.8シネオール(オキサイド類)
Rosmarinus officinalis ct. camphor 特徴成分:カンファー(ケトン類)
Rosmarinus officinalis ct. verbenone 特徴成分:ベルベノン(ケトン類)
※成分に関しては、次回、詳しく説明するつもりです。
他に、タイムやラベンダーでもケモタイプをよく見かけます。中には、特定の化学組成の系統種を繁殖を目的として挿し木で栽培されるものもあり(クローンになるのかな)、地域品種と呼ばれて市場に出るものもあります。
ところで、植物が生産する化学物質の変化には自然要因だけではありません。栽培条件、つまり、栽培者も影響を与えます。しかし、それは肥料や農薬などの影響を受けるというものではありません。精油の量や質(香りや薬効など)は、植物の成長期間を通じて変化するので、栽培時期や収穫のタイミングなども大きな影響があると考えられます。もちろん、自然現象は仕方ないとしても、ある程度のコントロール可能な環境づくりという意味でも、栽培者の影響を受けると言えます。
科
精油の商品情報として記載されるものがもう一つあります。「科」です。
植物療法全般でそうであるように、アロマセラピーでも治療作用の大まかな分類として「科」の持つ性質を参考にします。植物学的由来から見ても、共通の特性を持っていることが多いからです。
以下に、アロマセラピーでよく使われる精油の「科」を紹介します。
バンレイシ科: イランイラン
キク科: カモミール
シソ科: ラベンダー、クラリセージ、マジョラム、パチュリ、ペパーミント
クスノキ科: シナモン、カンファー
ヒノキ科: サイプレス、ジュニパー
マツ科: パイン、シダーウッド
まとめ
今回は、植物にとっての精油を見ていきました。ほとんどが、「植物学」としての知識でしたね。植物療法の一つであるアロマセラピーを行う際、植物のことを知ることは、絶対必要!ではないにしろ、興味を超えた有用な情報であると、私は思います。
途中でもお伝えしましたが、植物にとっての精油の役割はそのまま私たちが必要とする薬効に繋がることも多く、使用する精油の詳細な成分を把握せずとも、その生育環境を想像することで、ある程度の効能を知ることができるからです。
加えて、精油1滴1滴に含まれる成分の由来やパワーを実感して使用することは、アロマセラピーの効果を更に高めることに繋がるがのではないでしょうか?個人的な意見として、気持ちの込め方が変わる、という観点からですが…。
みなさんは、どう思われますか??
では今回も、最後までお読み頂き、ありがとうございました〜(╹◡╹)
次回はいよいよ、精油の化学成分をじっくり解説していきますね!